かりに、起訴状謄本の送達が適式でなかつたとしても、本件においては、被告人が異議を述べていないのであつてかかる場合には刑訴四二条の問題とならない。
刑訴法第四一一条に該当しない一事例(起訴状謄本の送達が適式でなくても被告人が異議を述べていないとき)
刑訴法271条,刑訴法309条,刑訴法411条
判旨
起訴状謄本の送達が不適法であったとしても、被告人がこれに対して異議を述べなかった場合には、刑訴法411条(判決の破棄事由)の問題とはならない。
問題の所在(論点)
起訴状謄本の送達が不適式であった場合、それ自体が直ちに判決の破棄事由(刑訴法411条各号)となるか。また、被告人が異議を述べなかったことによる影響をいかに解すべきか。
規範
起訴状謄本の送達に形式上の不備がある等の手続違背があったとしても、被告人がこれについて何ら異議を述べず、実質的な弁護権の行使に支障が生じていない場合には、職権による判決破棄(刑訴法411条)を要するほどの重大な違法には当たらない。
重要事実
被告人が起訴され、第1審および控訴審の手続が進められたが、被告人側は上告審に至り、初めて「被告人に対する起訴状謄本の送達が適法でない」との主張(刑訴法違反の主張)を提起した。なお、原審(控訴審)までの手続過程において、被告人は当該送達の不備について特段の異議を申し立てていなかった。
事件番号: 昭和26(れ)2040 / 裁判年月日: 昭和27年3月13日 / 結論: 棄却
判決言渡期日に被告人、弁護人を召喚しなかつた違法があつても、被告人が自白しておつて、弁護人も犯情について弁論したに止まり、被告人も別に陳述することがないとして弁論が終結された場合には、その違法は判決に影響があるとはいえない。
あてはめ
本件において、被告人側は起訴状謄本の送達が適式でない旨を主張するが、これは控訴審までに主張・判断されていない事項である。また、仮に送達手続に瑕疵があったとしても、被告人自身がその点について異議を述べることなく訴訟手続に応じている以上、防御権の本質的な侵害があったとは認められない。したがって、判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる事由(刑訴法411条)には該当しない。
結論
起訴状謄本の送達の不備は、被告人が異議を述べていない以上、本件においては刑訴法411条の破棄事由とはならない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟における「責問権の放棄」に近い考え方を示す。送達等の訴訟手続の形式的瑕疵については、早期に異議を述べない限り、後の不服申立理由として採用されない傾向にあることを実務上示唆するものである。
事件番号: 昭和25(あ)1217 / 裁判年月日: 昭和26年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法411条は、上告理由を定めたものではなく、最高裁判所が職権によって原判決を破棄できる事由を定めた規定である。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法違反等の罪で起訴され、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。弁護人は上告審において、第一審判決の併合罪(刑法47条)の適用に関し、どの罪を最も重い…
事件番号: 昭和25(あ)2458 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が単なる訴訟法違反や量刑不当の主張に留まり、刑訴法405条の定める上告理由に該当しないとして棄却された事例である。 第1 事案の概要:弁護人は、第一審または控訴審の判断に対し、訴訟手続に違反がある点(訴訟法違反)および言い渡された刑罰が重すぎる点(量刑不当)を理由として上告を申し立…
事件番号: 昭和25(あ)1583 / 裁判年月日: 昭和26年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告趣意が刑訴法405条の上告理由に当たらず、かつ記録を精査しても同法411条を適用して職権で判決を破棄すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決(詳細は判決文からは不明)に対して上告を提起した事案である。被告人は上告趣意書を提出…
事件番号: 昭和26(れ)1758 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には該当せず、特段の事情がない限り同法411条による職権破棄の対象にもならない。 第1 事案の概要:上告人は量刑が不当であることを理由に上告を申し立てたが、原判決の量刑判断において具体的にどのような憲法違反や判例違反があるのかについては明確な…