判決言渡期日に被告人、弁護人を召喚しなかつた違法があつても、被告人が自白しておつて、弁護人も犯情について弁論したに止まり、被告人も別に陳述することがないとして弁論が終結された場合には、その違法は判決に影響があるとはいえない。
判決言渡期日に被告人、弁護人を召喚しなかつた違法が判決に影響を及ぼさない一事例
旧刑訴法320条,旧刑訴法368条,刑訴法411条1号
判旨
判決言渡し期日に被告人及び弁護人を召喚した証跡が記録上存在しない場合であっても、被告人が犯罪事実を自認し、弁護人が執行猶予を求めて弁論を終結している等の事情があれば、判決に影響を及ぼす違法とはいえず、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
問題の所在(論点)
判決言渡し期日の召喚手続きに不備がある場合、その訴訟手続きの違法は判決に影響を及ぼすものとして破棄事由(刑訴法411条1号等)に該当するか。
規範
訴訟手続き上の瑕疵が上告理由となるためには、その違法が判決の内容・実質に影響を及ぼすものであることを要する。また、刑訴法411条を適用して職権で原判決を破棄するためには、その違法を放置することが著しく正義に反すると認められる事由が必要である。
重要事実
被告人が拳銃所持等で起訴された事案において、原審(控訴審)は判決言渡し期日に被告人および弁護人を召喚した証跡が記録上存在しなかった。しかし、言渡し前の公判廷において、被告人は犯罪事実をすべて自認しており、弁護人も執行猶予を求める弁論を行い、被告人の最終陳述を経て弁論が終結していた。
事件番号: 昭和25(あ)2628 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
かりに、起訴状謄本の送達が適式でなかつたとしても、本件においては、被告人が異議を述べていないのであつてかかる場合には刑訴四二条の問題とならない。
あてはめ
本件では、被告人及び弁護人を召喚した記録がないという手続的瑕疵は認められる。しかし、実質面を見ると、被告人は既に自白しており、弁護人も十分な弁護活動(執行猶予の主張)を行い、最終陳述の機会も与えられて弁論が終結している。そうであれば、言渡し期日の召喚漏れがあったとしても、判決の内容自体が不当に歪められたとはいえず、判決の実質に影響を及ぼす違法とは認められない。また、このような状況下での手続違法は、著しく正義に反するとまでは評価できない。
結論
本件の召喚手続きの不備は判決に影響を及ぼす違法ではなく、著しく正義に反するとも認められないため、上告を棄却し、原判決を維持すべきである。
実務上の射程
手続違法と破棄事由の関係を示す事案である。判決言渡しという形式的手続きの瑕疵であっても、被告人の防御権や実体審理に実質的な悪影響がない限り、判決に影響を及ぼす違法(411条等)とはならないという判断枠組みを、軽微な手続違反の場面で引用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1937 / 裁判年月日: 昭和26年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、上告適法の理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件につき上告を申し立てた際、弁護人が提出した上告趣意書において、原判決の量刑が不当である旨を主張した事案である。 第2 問題の所在(論点):刑事訴訟における量刑不当の主張が、適法…
事件番号: 昭和26(れ)1758 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には該当せず、特段の事情がない限り同法411条による職権破棄の対象にもならない。 第1 事案の概要:上告人は量刑が不当であることを理由に上告を申し立てたが、原判決の量刑判断において具体的にどのような憲法違反や判例違反があるのかについては明確な…
事件番号: 昭和26(あ)1999 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所に対し、被告人側から申請された証人をすべて尋問する義務を課したものではなく、必要性がないと判断される証人の尋問を却下しても同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲等所持禁止令違反等の罪に問われた事案において、特定の証人尋問を申請したが、裁判所によって採用され…
事件番号: 昭和26(れ)157 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認または量刑不当の主張は、刑訴応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書において、原判決における事実の認定に誤りがあること、および、宣告された刑の量定が不当に重いことを主張した。 第2…