記録を調べると原判決書の記載には所論のような違法があることはこれを認めざるを得ないのであるが、ただ未だ以て刑訴四一一条を適用すべきものとは云い得ないのである。(註)「第一審が無罪とした判示第四事実について破棄自判して有罪と認めるに当り証拠説明を遺脱したもの」
刑訴法第四一一条に当らない一事例
刑訴法411条
判旨
判決書に訴訟法上の違法が認められる場合であっても、刑訴法411条の職権破棄事由に該当するほどの著しい不利益や正義に反する状況がない限り、上告棄却を免れない。
問題の所在(論点)
上告理由が形式的には不適法であっても、判決書に訴訟法上の違法が認められる場合に、刑訴法411条を適用して職権で原判決を破棄すべきか。
規範
上告裁判所は、上告理由が単なる訴訟法違背等の不適法な主張にすぎない場合であっても、記録を調査し、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、刑訴法411条に基づき職権で原判決を破棄することができる。逆にいえば、違法が認められる場合であっても、同条の適用が必要と認められない限りは判決を維持すべきである。
重要事実
被告人側が、原判決には憲法31条違反や判例違反、事実誤認等の訴訟法上の違法があると主張して上告を申し立てた事案。最高裁判所は、原判決書の記載に主張どおりの違法が存在すること自体は認めたが、その違法の程度や内容については具体的に判示していない。
事件番号: 昭和26(れ)1758 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には該当せず、特段の事情がない限り同法411条による職権破棄の対象にもならない。 第1 事案の概要:上告人は量刑が不当であることを理由に上告を申し立てたが、原判決の量刑判断において具体的にどのような憲法違反や判例違反があるのかについては明確な…
あてはめ
本件において、上告人が主張する違憲や判例違反の主張は、実質的には単なる訴訟法違背や事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由には当たらない。また、最高裁判所の記録調査によれば、原判決書に一定の訴訟法上の不備(違法)があることは認められるものの、その程度は刑訴法411条を適用して判決を破棄しなければならないほど重大なものとはいえない。
結論
本件上告には適法な上告理由がなく、かつ職権破棄の必要性も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
訴訟法上の軽微な不備(理由不備など)が判決書に存在しても、直ちに職権破棄(411条)には繋がらないことを示す。実務上、上告審での救済を求めるには、単なる「違法」の指摘に留まらず、それが「著しく正義に反する」レベルであることを具体的に論証する必要がある。
事件番号: 昭和26(れ)1249 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣意が単なる量刑不当の主張にすぎない場合、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない。また、職権による破棄事由も認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が原判決の量刑を不当として上告を申し立てた事案である。判決文からは具体的な犯罪事実や経緯の詳細は不明であ…
事件番号: 昭和25(あ)1822 / 裁判年月日: 昭和27年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法411条は上告裁判所が職権で原判決を破棄できる事由を定めた規定であり、当事者が主張すべき適法な上告理由を定めたものではない。したがって、同条に基づく主張は実質的に量刑不当等の非難にすぎない場合、刑訴法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cおよびそれぞれの弁護人…
事件番号: 昭和26(れ)157 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認または量刑不当の主張は、刑訴応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書において、原判決における事実の認定に誤りがあること、および、宣告された刑の量定が不当に重いことを主張した。 第2…
事件番号: 昭和26(れ)477 / 裁判年月日: 昭和26年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が単なる量刑不当の主張に帰する場合、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その上告趣意の内容が実質的に原判決の量刑が不当であるという点に尽きていた事案である。 第2 問題の所在(論点):上告趣意が単なる量刑不当の…