弁護人から公判期日延期の申請があつても、その申請の理由につき何等疏明もしない本件においては、原裁判所は、これを許さなければならないものではない。原裁判所は右申請を許さず当初指定した公判期日にその公判を開いたものであつて、その法廷において右申請を許さない旨の決定を宣したからといつてその決定を被告人並びに弁護人に通知する必要はない。又本件は必要弁護事件ではないから、弁護人が出頭しなくても開廷することができるものであり、原審は刑訴三九一条に基き検察官の陳述を聴いて結審し弁護人提出の控訴趣意書に含まれた事項につき判決したのであるから、控訴趣意書につき審理しないとの主張は理由がない。
刑訴四一一条にあたらない事例 −控訴審における弁護人の不出頭−
刑訴法276条,刑訴法391条,刑訴法411条,刑訴規則179条の4,刑訴規則179条の5
判旨
公判期日延期の申請に対し理由の疎明がない場合、裁判所はこれを許さなければならないものではなく、当初の期日に開廷して申請を却下する決定を宣した以上、改めてその決定を被告人等に通知する必要はない。また、任意弁護事件において弁護人が欠席しても、検察官の陳述を聴いて結審し、控訴趣意書の内容を判断すれば、手続に違法はない。
問題の所在(論点)
弁護人が期日延期を申請したものの疎明がない場合に裁判所が延期を拒絶し、弁護人不在のまま結審・判決することは、被告人の防御権を侵害する違法な手続となるか。また、期日延期却下の決定を被告人等に個別に通知する必要があるか。
規範
1. 公判期日延期の申請があった場合でも、その理由につき疎明がないときは、裁判所は申請を容認すべき義務を負わない。2. 裁判所が期日において申請却下の決定を宣したときは、その通知を別途行う必要はない。3. 任意弁護事件(刑訴法289条1項以外の事件)では、弁護人の出頭がなくても開廷することが可能であり(刑訴法391条参照)、控訴趣意書に基づき審理・判決を行えば審理不尽とはならない。
重要事実
被告人の弁護人が公判期日の延期を申請したが、その理由についての疎明を全く行わなかった。原裁判所は延期を認めず、当初指定した期日に公判を開き、法廷で申請を許さない旨の決定を宣した。本件は必要弁護事件ではなく、弁護人は出頭しなかったが、原審は検察官の陳述を聴いて結審し、弁護人が提出していた控訴趣意書の内容(主に量刑不当)を検討して判決を下した。
あてはめ
まず、期日延期申請について疎明がない以上、裁判所が申請を許さず当初の期日に開廷したことに裁量権の逸脱はない。また、法廷内で申請を許さない旨の決定を宣している以上、改めて通知を行う必要もない。さらに、本件は必要弁護事件ではないため、刑訴法391条に基づき弁護人の欠席下で開廷し、検察官の陳述を聴く手続は適法である。原審は提出済みの控訴趣意書を精読して判断しており、控訴趣意に含まれる事項の判断遺脱も認められない。
結論
原審の手続は適法であり、公判期日延期申請の却下や弁護人不在での結審に違法はない。したがって、被告人側の控訴は棄却されるべきである。
実務上の射程
弁護人の欠席や期日延期申請に対する裁判所の合理的な裁量権の範囲を示す。特に、疎明のない延期申請に対して裁判所が強い態度で臨むことを肯定しており、実務上は弁護人が期日を維持できない場合の疎明責任の重要性と、任意弁護事件における刑訴法391条の適用の限界を画するものとして参照できる。
事件番号: 昭和29(あ)878 / 裁判年月日: 昭和29年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法違反の罪は、刑事訴訟法289条1項に規定する「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」には該当せず、必要的弁護事件ではない。したがって、弁護人なしで審理・判決をしても、憲法が保障する弁護権の侵害や必要的弁護の規定違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は公…