判旨
控訴審で主張せず原判決が判断を示していない事項についての判例違反の主張は、適法な上告理由とはならず、また、事実誤認が明白であっても刑訴法411条を適用すべき特段の事情がない限り上告は棄却される。
問題の所在(論点)
控訴審において主張せず、かつ原判決が判断を示していない事項についての判例違反の主張が、適法な上告理由となるか。また、事実関係に軽微な齟齬がある場合に刑訴法411条による職権取消しを行うべきか。
規範
刑訴法405条の判例違反を上告理由とするには、原則として控訴審で主張され、かつ原判決が判断を示した事項であることを要する。また、刑訴法411条に基づく職権による判決取消しは、著しく正義に反すると認められる特段の事情がある場合に限定される。
重要事実
被告人Aは、昭和27年10月21日にBに対して金員を供与した罪に問われた。弁護人は上告審において、量刑不当に加え、控訴審では主張していなかった事項について判例違反を主張した。また、第一審判決の摘示事実等に事実関係の齟齬の可能性が示唆された。
あてはめ
弁護人が追加で主張した判例違反は、控訴趣旨に含まれておらず、原判決も判断を下していない。したがって、原判決が判例と抵触する余地はなく、適法な上告理由にはあたらない。また、金員の供与日時や相手方の特定に関する事実については、証拠を総合すれば昭和27年10月21日にBに対して行われたことが極めて明白であり、刑訴法411条を適用して破棄すべき重大な誤りはないといえる。
結論
本件各上告を棄却する。控訴審で未主張の事項に基づく判例違反の主張は不適法であり、事実関係の認定も正当である。
実務上の射程
上告審における上告理由の制限を再確認する事例である。実務上は、控訴審での主張の有無が上告理由の適格性に直結すること、および刑訴法411条の適用が極めて限定的であることを示す材料として機能する。
事件番号: 昭和28(あ)5053 / 裁判年月日: 昭和29年4月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告趣意が形式的に判例違反を主張するものであっても、その実質が刑訴法411条の職権破棄事由の主張にすぎず、かつ原審が認定していない事実を前提とする場合には、上告の適法な理由には当たらないと判示したものである。 第1 事案の概要:被告人側は、原審の判断に判例違反があると主張して上告を申し立て…