判旨
判例違反を理由とする上告において、原判決の認定した事実と異なる独自の事実を前提とする主張は、前提を欠くものとして採用されない。
問題の所在(論点)
原判決の認定事実と異なる独自の事実を前提として、判例違反を上告理由に掲げることが許されるか(刑訴法405条2号・3号)。
規範
上告審において判例違反を主張する場合、その主張は原判決が認定した事実を前提としなければならない。原判決が適法に認定した事実を否定し、独自の事実想定に基づいて判例との抵触を主張することは、上告理由として不適法である。
重要事実
被告人側は、原判決が大審院判例等に違反すると主張して上告した。しかし、その主張の根拠となる事実は、原判決が第一審判決の採用した証拠に基づき適法に認定した事実(第一の1および第二の各事実)とは異なるものであった。
あてはめ
本件において、原判決は第一審の証拠を引用して事実を認定しており、記録に照らしてもその認定は適当である。これに対し、弁護人の主張は原判決の認定事実に沿わない独自の事実を想定した上での判例違反の指摘であり、判断の前提を欠いている。また、記録を精査しても刑訴法411条(職権による判決取消)を適用すべき事由も認められない。
結論
本件各上告を棄却する。
実務上の射程
司法試験の答案作成においては、上告審の構造(事後審・書面審)を理解する上で重要である。判例違反を論じる際は、まず下級審の認定事実を確定させ、その事実関係と判例の射程がどう重なるかを論じるべきであり、事実認定そのものを争う場合は別個の理由(刑訴法411条3号等)による必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和28(あ)5053 / 裁判年月日: 昭和29年4月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告趣意が形式的に判例違反を主張するものであっても、その実質が刑訴法411条の職権破棄事由の主張にすぎず、かつ原審が認定していない事実を前提とする場合には、上告の適法な理由には当たらないと判示したものである。 第1 事案の概要:被告人側は、原審の判断に判例違反があると主張して上告を申し立て…