一 刑訴第二四条により、訴訟を遅延させる目的のみでなされたことの明らかな忌避申立を却下した決定に対する即時抗告については、刑訴第四二五条の規定は適用されないものと解しても、憲法第三七条第一項に違反しない。 二 刑訴第二八五条第二項の適用を受ける事件において、被告人が召喚されていた公判期日に出頭しなかつた場合に、裁判所が被告人不出頭のまま審理をなし、公判調書にもその旨記載されているときは、裁判所は被告人に不出頭を許可し、その旨の決定があつたものと解すべきである。
一 訴訟遅延のみを目的とする忌避申立却下決定に対する即時抗告と刑訴第四二五条の適用の有無及び憲法第三七条第一項 二 刑訴第二八五条第二項にあたる事件で被告人不出頭のまま公判の審理をした場合と被告人の不出頭許可決定
憲法37条1項,刑訴法24条,刑訴法25条,刑訴法425条,刑訴法285条2項,刑訴法43条,刑訴規則33条,刑訴規則34条
判旨
訴訟遅延目的の明らかな忌避申立てを却下する決定(刑訴法24条)に対して即時抗告がなされた場合、訴訟手続の停止を規定した同法425条は適用されず、手続を停止する必要はない。また、軽微事件において被告人が召喚を受けながら不出頭のまま審理が行われた場合、特段の明記がなくても裁判所による不出頭許可があったものと解される。
問題の所在(論点)
1. 刑訴法24条に基づく忌避申立ての却下決定に対し即時抗告がなされた場合、刑訴法425条を適用して訴訟手続を停止しなければならないか。 2. 被告人の出頭が原則として必要な事件において、被告人が不出頭のまま審理が行われた場合、不出頭許可の決定が調書に明示されていなければ違法となるか。
規範
1. 訴訟を遅延させる目的のみでされた明らかな忌避申立てに対し、忌避された裁判官自らが決定で却下する簡易却下の手続(刑訴法24条)がとられた場合、同法425条による訴訟手続停止の規定は適用されない。 2. 刑訴法285条所定の軽微事件において、冒頭手続及び判決宣告時を除き、被告人が召喚されながら出頭しない場合に裁判所がそのまま審理を進めたときは、黙示的に不出頭許可の決定があったものと解され、公判調書への明記も不要である。
重要事実
被告人が刑事裁判において、訴訟遅延目的であることが明らかな忌避申立てを行った。裁判官はこれを簡易手続(刑訴法24条)に基づき却下したが、弁護人はこの却下決定に対し即時抗告を申し立てた。しかし、裁判所は訴訟手続を停止することなく審理を継続した。また、被告人が出頭義務のある公判期日に召喚を受けたにもかかわらず不出頭であった際、裁判所は不出頭許可の決定を調書に明記することなく審理を進行させた。
あてはめ
1. 刑訴法24条の簡易却下制度は、訴訟遅延を防ぐ趣旨で特に設けられたものであるから、この手続による却下に対しては、当然に手続停止の効力は及ばないと解するのが法の趣旨に合致する。したがって、即時抗告があっても審理を停止しなかった第一審の手続は正当である。 2. 刑訴法285条の趣旨は、特定の場合を除き被告人の出頭がなくとも審理を可能にする点にある。被告人が召喚に応じず、裁判所がそのまま審理を進行させたという事実自体が、裁判所による裁量的判断(不出頭許可)の存在を推認させるため、手続上の違法は認められない。
結論
1. 刑訴法24条の却下決定に対する即時抗告には同法425条は適用されず、訴訟手続を停止する必要はない。 2. 被告人の不出頭のまま審理を進行させた事実は不出頭許可の決定があったものと看做され、有効である。
実務上の射程
忌避申立ての濫用(遅延目的)に対する実務上の対抗手段を確認する際や、軽微事件における被告人不出頭時の公判手続の適法性を論じる際の根拠となる。特に、簡易却下と即時抗告の停止効の関係を否定した点は、迅速な裁判の実現という観点から重要である。
事件番号: 昭和59(し)53 / 裁判年月日: 昭和59年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方裁判所の一人の裁判官が刑事訴訟法24条に基づき行った忌避申立却下の決定に対し、不服を申し立てる手段は、同法429条1項所定の準抗告によるべきであり、同法25条所定の即時抗告をすることはできない。 第1 事案の概要:抗告人は、地方裁判所の一人の裁判官に対して裁判官忌避の申立てを行った。これに対し…