判旨
裁判長が被告人に対し、刑訴法291条2項(現3項)に定める供述拒否権を告知しなかったとしても、憲法に違反するものではない。また、控訴裁判所が量刑不当により破棄自判する場合、第1審判決が証拠により認めた事実を引用して判決しても刑訴法335条の要件を欠くものではない。
問題の所在(論点)
裁判長が被告人に対し、冒頭手続において黙秘権(刑訴法291条2項)を告知しなかった場合に、それが憲法違反となるか。また、控訴審が第1審の認定事実を引用して破棄自判することが、判決書に罪となるべき事実等を記載すべきとする刑訴法335条の要件を充たすか。
規範
1. 冒頭手続における黙秘権(供述拒否権)の告知欠如は、直ちに憲法違反とはならない。2. 控訴裁判所が第1審判決を破棄し、量刑のみを改めて自判する場合において、第1審が確定した事実に法令を適用して判決することは適法である。
重要事実
被告人が刑事裁判において、裁判長から刑事訴訟法291条2項(現3項)に基づく供述拒否権の告知を受けなかった点、および控訴審において第1審判決の認定事実を引用して自判された点について、憲法違反および訴訟手続の法令違反を理由に上告した事案である。
あてはめ
1. 供述拒否権の告知については、既往の最高裁大法廷判決の趣旨に照らし、告知を欠いたとしても直ちに憲法違反とはいえない。2. 原判決(控訴審)は、第1審が「証拠によって認めた事実」を引用している。これは原判決自ら第1審と同一の証拠により同一の事実を認定した趣旨と解され、量刑不当を理由に破棄自判する際は、第1審の確定事実に法令を適用すれば足りる。
結論
被告人の上告を棄却する。供述拒否権の告知欠如は憲法違反ではなく、第1審の事実認定を引用した自判手続も適法である。
実務上の射程
手続的瑕疵の憲法判断の射程を示す。実務上、冒頭手続での告知は必須であるが、その欠如が直ちに無効・違憲をもたらすものではないことを確認した判例である。また、自判時の事実認定において「引用」の形式が許容される範囲を明確にしている。
事件番号: 昭和29(あ)345 / 裁判年月日: 昭和29年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および関係人の供述に任意性を疑わせる証跡が認められない場合、当該供述を事実認定の証拠として採用することは憲法および刑事訴訟法に違反しない。 第1 事案の概要:第一審が被告人および関係人の供述を事実認定の証拠として採用したところ、弁護人がこれらは強要による供述であり、憲法に違反する旨を主張して…