判旨
上告審において事実審理を行わない仕組みは、審級制度の設計を法律に委ねた憲法の趣旨に反せず、また供述の任意性に疑いがない限り、検察官面前調書を事実認定の資料とすることは適法である。
問題の所在(論点)
上告審において事実審理を行わないことが憲法が保障する裁判を受ける権利に反しないか。また、任意性に疑いがあると主張される検察官面前調書を事実認定の資料とすることは許されるか。
規範
憲法が定める裁判を受ける権利において、審級制度をどのように構成するかは法律の定めに委ねられており、上告審を法律審として事実審理を行わないこととしても違憲ではない。また、供述調書の証拠能力については、記録上強制によってなされたと認められる事跡がない限り、これを事実認定の資料に供することは許容される。
重要事実
被告人3名が公職選挙法違反等に問われた事件において、弁護人は、(1)上告審において事実審理を行わないこと、(2)強制によってなされた疑いのある検察官に対する各供述調書を事実認定の資料としたこと、(3)公職選挙法の規定自体が違憲であること、を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
まず、審級制度の設計は立法府の裁量に属するものであり、先行する大法廷判例に照らし、上告審を法律審とすることは違憲ではない。次に、被告人らの供述調書について記録を精査しても、強制によって作成されたと認めるに足りる証跡は存在しない。したがって、第一審がこれらを証拠として採用し、原審がそれを是認した判断に違法はない。さらに、公職選挙法の規定の合憲性についても、既に確立された判例の趣旨に徴して明らかである。
結論
本件各上告を棄却する。上告審が事実審理を行わないこと、および任意性に疑いのない供述調書を証拠とすることは、いずれも憲法・法令に違反しない。
実務上の射程
司法試験においては、憲法上の審級制度の合憲性や、刑事訴訟法における自白の任意性に関する論点(憲法38条2項、刑訴法319条1項)を論じる際の基礎的な判例として位置づけられる。特に「審級制度の具体的内容は法律に委ねられている」という法理は頻出である。
事件番号: 昭和29(あ)76 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に十分な補強証拠が存在し、かつ検察官に対する供述が強要や誘導によるものと認められない場合には、憲法38条3項等の違憲の主張は前提を欠き、有罪判決は維持される。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事実について、第一審判決は被告人の自白のほかに補強証拠を掲げて事実を認定し、原判決もこ…