判旨
第一審で必要的弁護事件となる罰条が追加された際、既に選任されていた弁護人が異議を述べず訴訟を進行させ、控訴審でも当該違法を主張しなかった場合、上告審で新たに第一審の証拠調手続の違法を主張することは許されない。
問題の所在(論点)
訴訟の途中で必要的弁護事件となったにもかかわらず、手続上の瑕疵があった場合に、第一審や控訴審で争わなかった被告人側が、上告審において初めてその違法を主張することが許されるか。
規範
第一審の証拠調手続に関する訴訟法違反の点について、被告人側が第一審および控訴審の段階で異議を述べず、特段の不服申し立ても行わずに訴訟手続を進行させた場合には、当該手続上の違法を新たに上告審において主張することは、特段の事情がない限り許されない。
重要事実
被告人は当初、非必要的弁護事件である公職選挙法221条1項1号違反で起訴された。その後、検察官の請求により必要的弁護事件に該当する同条3項3号の罰条が追加された。この罰条追加時、既に弁護人は選任されていたが、弁護人は罰条追加に対して異議を述べず、反証の取調請求を行うなどして訴訟を進行させた。第一審の弁論終結時や控訴審の控訴趣意においても、訴訟手続の違法に関する主張はなされなかった。
あてはめ
本件では、罰条追加により必要的弁護事件となった時点ですでに弁護人が選任されており、実質的な弁護を受ける機会は保障されていたといえる。また、弁護人は罰条追加に異議を唱えることなく積極的に証拠調べに関与しており、第一審の判決に至るまで手続的な不服を示していない。さらに、控訴審においてもこの点を主張する機会があったにもかかわらずこれを放棄している。このような訴訟経過に照らせば、上告審に至ってから初めて第一審の証拠調手続の違法を主張することは、訴訟経済および信義則の観点からも認められないと解される。
結論
上告審において新たに第一審の証拠調手続の違法を主張することは許されず、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
必要的弁護事件における弁護人不在の瑕疵等、重大な手続違反であっても、被告人側が各審級でこれを知りつつ争わずに手続を進行させた場合には、上告審での主張が制限されることを示唆する。責問権の喪失に類似した法理として、実務上、手続違法の主張時期を検討する際の判断材料となる。
事件番号: 昭和26(あ)549 / 裁判年月日: 昭和26年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人が第一審において書証の証拠採用に同意している場合、その手続上の違法を理由に憲法違反を主張することは、前提を欠き適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:第一審の証拠調手続において、被告人および弁護人は、特定の書証を証拠とすることについて同意を与えていた。その後、上告審におい…