判旨
被告人が管轄違いの申立てをすることなく公判廷において証拠調べ等の審理を受けた場合には、管轄違いを前提とする憲法違反の主張を上告理由とすることはできない。
問題の所在(論点)
被告人が第一審において管轄違いの申立てをせず、実体審理を受けた後に、上告審で管轄違いを理由とした憲法違反の主張をすることが許されるか(応訴による管轄の確定)。
規範
刑事訴訟法上の土地管轄等に関する瑕疵は、被告人が管轄違いの申立てをすることなく、公判廷において証拠調べ等の実体審理を受けた場合には、応訴によって治癒されるか、あるいは申立権の放棄があったものと解される。
重要事実
被告人Aは、佐賀地方裁判所において本件被告事件について審理を受けた。その際、被告人側は管轄違いの申立てを行うことなく、公判廷における証拠調べの手続に及んだ。その後、上告段階において、第一審の管轄に誤りがあることを前提とした憲法違反の主張を行った。
あてはめ
記録によれば、上告人(被告人A)は佐賀地方裁判所の公判廷において、管轄違いの申立てを何ら行っていない。そればかりか、同裁判所において証拠調べを受け、実体的な審理を継続している。このような状況下では、管轄の有無を争う権利を失ったものといえるため、管轄違いを前提とした違憲の主張は、その前提自体を欠くものと評価せざるを得ない。
結論
被告人が第一審で異議なく審理に応じた以上、管轄違いを前提とする主張は認められず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における土地管轄等の任意管轄的事項について、被告人が異議なく応訴した場合の管轄権の確定(責問権の放棄・喪失)を示す事例である。答案上は、管轄の瑕疵が治癒される場面や、上告理由の前提を欠く場面での根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3383 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で適法になされた追起訴、公訴取消し、訴因変更等を経て判決が下された場合、被告人側が異議を述べず手続が進んだ以上、上告審においてこれを訴訟法違反と主張することはできない。 第1 事案の概要:被告人は詐欺及び同未遂等の罪で起訴された。第一審の手続において、検察官による追起訴や訴因・罰条の追加、変…
事件番号: 昭和30(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
贈賄者が別件で無罪になつたからといつて、その別件の既判力が本件収賄等被告事件に及ぶ道理がない。
事件番号: 昭和29(あ)2741 / 裁判年月日: 昭和30年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人らの上告理由が、適切な判例引用を欠くものや単なる事実誤認・量刑不当の主張に留まる場合、適法な上告理由に当たらない。酒税法の改正前後に関する法令適用の誤りについても、その実質が単なる訴訟法違反の主張に過ぎない場合は棄却される。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cらが、酒税法違反等の罪状について…
事件番号: 昭和28(あ)4636 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 棄却
一 控訴審が控訴趣意として主張された量刑不当について判断せず、他の控訴趣意を理由あるものとして第一審判決を破棄自判して刑を言渡したからとて、審理不尽であるということはできない。 二 量刑不当の控訴趣意は、第一審判決を破棄すべき理由として主張されたのであるから、他の控訴趣意が理由あるものとして第一審判決が破棄される以上、…