贈賄者が別件で無罪になつたからといつて、その別件の既判力が本件収賄等被告事件に及ぶ道理がない。
贈賄被告事件の無罪判決の既判力は収賄被告事件に及ぶか
刑法197条,刑法198条,刑訴法337条
判旨
贈賄者が別件で無罪判決を受けたとしても、その既判力が収賄被告事件に及ぶことはなく、裁判所は独自の証拠に基づき収賄の事実を認定できる。
問題の所在(論点)
贈賄被告事件における無罪判決の既判力が、対向関係にある収賄被告事件の事実認定に影響を及ぼすか。
規範
判決の既判力は、その当事者間でのみ生じるものであり、対向関係にある他の被告人の刑事裁判に当然に及ぶものではない。したがって、贈賄側が無罪となった事実は、収賄側の事実認定を拘束しない。
重要事実
被告人両名は収賄罪に問われていた。一方、対向犯である贈賄者は、別件の刑事裁判において無罪判決を受けて確定していた。被告人側は、贈賄者が無罪となった以上、収賄の事実は認められないと主張し、原判決の事実誤認を訴えて上告した。
あてはめ
既判力の性質上、贈賄者が別件で無罪になったからといって、その別件の既判力が本件(収賄被告事件)に及ぶ道理はない。原判決が、第一審判決において贈賄者の供述調書等を含む証拠を挙示して収賄の事実を認定したことを是認した判断に、誤りはないと解される。
事件番号: 昭和28(あ)4831 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一人に対する有罪判決が、証拠能力のない証拠を事実認定に用いた訴訟手続の法令違反により破棄された場合であっても、その違法が当然に他の共同被告人の事実認定に影響を及ぼし、上告理由となるものではない。 第1 事案の概要:本件において、被告人とともに審理を受けていた相被告人の有罪部分が、原審(控訴…
結論
贈賄者の無罪判決は収賄事件に影響せず、独自の証拠に基づき収賄罪の成立を認めることができる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
対向犯(収賄と贈賄、共謀共同正犯など)の一方が無罪となった場合でも、他方の公判における証拠調べの結果、異なる事実認定をすることは許容される。証拠裁判主義の帰結として、他人の裁判の結果に拘束されないことを示す実務上重要な指針である。
事件番号: 昭和25(れ)1075 / 裁判年月日: 昭和25年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証人尋問の際に、便宜上関連する別事件の記録を参照したとしても、職権により当該記録を証拠として採用したものではなく、尋問結果(証言内容)に基づいて事実を認定している限り、証拠裁判主義に反しない。 第1 事案の概要:原審の第2回公判において、証人Aの尋問が行われた。その際、裁判所は本件と関連し…
事件番号: 昭和26(あ)1504 / 裁判年月日: 昭和28年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状に記載された詐欺の被害金額が、代金と奨励金の合計額として特定されている場合、裁判所がその内訳や性質の解釈を検察官の主張と異ならせて認定しても、不告不理の原則には反しない。 第1 事案の概要:検察官は、被告人らが早期供出米の「代金」と「奨励金」を騙取しようと企て、これらが不可分に結合した合計約…
事件番号: 昭和27(あ)5407 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の検察官面前供述調書は、当該被告人との関係において刑事訴訟法321条1項にいう「被告人以外の者」の供述を録取した書面に該当し、同項各号の要件を満たす限り証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人と共同被告人が起訴された事件において、第一審裁判所は共同被告人の供述調書を証拠として採用…
事件番号: 昭和29(あ)3682 / 裁判年月日: 昭和30年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が管轄違いの申立てをすることなく公判廷において証拠調べ等の審理を受けた場合には、管轄違いを前提とする憲法違反の主張を上告理由とすることはできない。 第1 事案の概要:被告人Aは、佐賀地方裁判所において本件被告事件について審理を受けた。その際、被告人側は管轄違いの申立てを行うことなく、公判廷に…