判旨
裁判所が証人尋問の際に、便宜上関連する別事件の記録を参照したとしても、職権により当該記録を証拠として採用したものではなく、尋問結果(証言内容)に基づいて事実を認定している限り、証拠裁判主義に反しない。
問題の所在(論点)
裁判所が証人尋問において、未だ証拠として提出されていない別事件の記録を「尋問の便宜」のために利用することが、適法な証拠調べを経ない証拠による事実認定として許されるか。
規範
事実の認定は、適法な証拠調べを経た証拠に基づかなければならない(証拠裁判主義)。ただし、裁判官が証人尋問を円滑に進めるための「便宜」として外部資料を参照することは、それが直ちに事実認定の直接の証拠とならない限り、直ちに違法とはされない。
重要事実
原審の第2回公判において、証人Aの尋問が行われた。その際、裁判所は本件と関連し同裁判所に係属していた別事件(Aに対する贈賄物価統制令違反事件)の記録の一部を尋問の便宜のために利用した。被告人側は、これが職権による証拠採用にあたり違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審は別事件の記録を職権により証拠として提出・採用した事実は認められない。あくまで尋問の便宜に供したに過ぎず、実際に原判決が事実認定の根拠としたのは、当該尋問によって得られた「証人Aの供述そのもの」である。したがって、記録そのものを証拠としたわけではないため、証拠法上の手続違反は存在しないといえる。
結論
尋問の便宜のために別事件の記録を利用しても、事実認定の基礎が適法な尋問結果である限り、証拠裁判主義に反せず適法である。
実務上の射程
裁判官による訴訟指揮や尋問の際の資料利用の限界を示すものである。答案上は、証拠調べを経ていない資料が「実質的に事実認定の根拠(証拠)」となっているのか、単なる「尋問の補助資料」に留まるのかを区別する際に活用できる。ただし、現代の刑事訴訟法下では予断排除原則(256条6項)や伝聞法則との関係に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(れ)868 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の援用において「判示同旨の供述」と示すことは、判示内容と異なる部分を証拠から除外する趣旨を含む。また、公務員の了解を得ていたとの主張があっても、客観的事実に基づき「ほしいままに」作成したと認定することは、裁判所の自由裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は、肥料配給公団に関連する証明書に書き…
事件番号: 昭和27(あ)546 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に反対尋問の機会が与えられた証人について、公判供述ではなく検察官面前調書の記載を証拠として採用し事実認定の資料とすることは、裁判所の適法な証拠の取捨選択の範囲内である。 第1 事案の概要:被告人Bは、証人Cに対する第一審での証拠調べにおいて反対尋問の機会を与えられていた。しかし、原審および第…
事件番号: 昭和25(れ)1426 / 裁判年月日: 昭和25年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜査報告書に添付された一覧表が独立した証拠書類に当たらない場合であっても、被告人が公判廷においてその記載内容を引用して自らの供述内容としたときは、当該一覧表を被告人の供述内容を明確にするための資料として判決に引用することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は詐欺罪で起訴された。原審において、司…
事件番号: 昭和28(あ)4831 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一人に対する有罪判決が、証拠能力のない証拠を事実認定に用いた訴訟手続の法令違反により破棄された場合であっても、その違法が当然に他の共同被告人の事実認定に影響を及ぼし、上告理由となるものではない。 第1 事案の概要:本件において、被告人とともに審理を受けていた相被告人の有罪部分が、原審(控訴…
事件番号: 昭和34(あ)397 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の証拠説明において明白な誤謬がある場合であっても、本来の趣旨に従って文意を読解すべきであり、その読解に基づいて判決の正当性を判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人A、B、C、Dの各弁護人が量刑不当、判例違反、法令違反、事実誤認を理由に上告を申し立てた。特に被告人Bの弁護人は、原判決の理…