判旨
被告人に反対尋問の機会が与えられた証人について、公判供述ではなく検察官面前調書の記載を証拠として採用し事実認定の資料とすることは、裁判所の適法な証拠の取捨選択の範囲内である。
問題の所在(論点)
反対尋問の機会が与えられた証人について、その公判供述ではなく検察官面前調書を採用して事実認定を行うことは、被告人の権利を侵害し、裁判所の裁量権を逸脱する訴訟法違反(伝聞法則等の違反)となるか。
規範
事実認定の基礎となる証拠の取捨選択は、証拠法則に反しない限り、裁判所の自由な裁量に委ねられる。証人について反対尋問の機会が確保されている等の適法な証拠調べがなされた後であれば、当該証人の公判供述と検察官面前調書のいずれを事実認定の資料とするかは、裁判所の合理的な裁量判断に属する。
重要事実
被告人Bは、証人Cに対する第一審での証拠調べにおいて反対尋問の機会を与えられていた。しかし、原審および第一審は、証人Cの公判における供述を採用せず、検察官に対する供述調書の記載を事実認定の資料として採用した。これに対し、被告人側は憲法違反(対審権・証人尋問権侵害等)および訴訟法違反を主張して上告した。
あてはめ
本件では、証人Cに対して第一審で被告人に反対尋問の機会が与えられていることが記録上明白である。また、第一審および原審は適法になされた証拠調べの結果に基づき、公判供述を排して検察官面前調書を採用している。これは、証拠の証明力を評価した上での取捨選択であり、裁判所に認められた証拠評価の裁量権の範囲内にあると解される。したがって、適法な手続を経て提出された証拠のいずれを重視するかは裁判所の専権であり、憲法違反や重大な訴訟法違反は認められない。
結論
反対尋問の機会が保障されていた以上、公判供述ではなく検察官面前調書を証拠として採用することは適法であり、上告は棄却される。
事件番号: 昭和26(あ)2196 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当な証拠採用が認められる場合であっても、当該証拠を除外した他の証拠によって犯罪事実が十分に認定できるときは、判決に影響を及ぼすべき著しい誤りがあるとはいえず、刑訴法411条の適用による破棄を要しない。 第1 事案の概要:被告人両名につき、第一審判決がBの検察事務官に対する供述調書を含む複数の証拠…
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項2号後段等)の要件を充足し、かつ反対尋問権の保障(憲法37条2項)が実質的に図られている場合、公判供述と調書のどちらを事実に採用するかは自由心証主義の範疇であることを示す。答案では、伝聞例外の該当性を検討した後の、証拠の証明力評価(自由心証)の正当性を基礎付ける判例として引用し得る。
事件番号: 昭和26(れ)330 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べの範囲および限度は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられており、特定の証人の尋問請求を却下したとしても、直ちに違法となるものではない。 第1 事案の概要:被告人が詐欺等の罪に問われた事案において、第一審および原審(控訴審)は、弁護人が請求した証人の尋問を却下した。これに対し弁護人側は、詐取…
事件番号: 昭和27(あ)1177 / 裁判年月日: 昭和27年6月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠調べ手続の開始前に被告人に対して犯罪事実に関する質問を行うことは、黙秘権を侵害するような不当な圧迫にわたらない等の合理的な範囲内であれば、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:第一審裁判所において、証拠調べ手続に入る前の段階で、裁判官が被告人に対し、起訴状に記載された犯罪事実につ…
事件番号: 昭和35(あ)1664 / 裁判年月日: 昭和38年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が証拠とすることに同意した供述調書は、その同意が訴訟法上無効であると認められない限り、憲法37条2項等の違憲の問題を生じない。 第1 事案の概要:被告人両名が、検察官作成の供述調書について証拠とすることに同意した事案である。被告人側は後に、当該同意が訴訟法上無効であること、また当該供述が検察…
事件番号: 昭和27(あ)1140 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人として併合審理されていた者は、実質的に反対尋問の機会が与えられていたといえるため、証人尋問を経ずともその供述を証拠とすることが憲法に違反しない。また、被告人の自白調書の取調べ請求が他の証拠調べの後に行われた場合であっても、訴訟手続上の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人Dは、第…