判旨
証拠調べの範囲および限度は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられており、特定の証人の尋問請求を却下したとしても、直ちに違法となるものではない。
問題の所在(論点)
事実審裁判所による証拠調べの請求に対する却下決定が、裁判所の裁量権の範囲内として許容されるか。また、詐欺罪の客体(目的物件)の表示において、どの程度の特定が求められるか。
規範
刑事訴訟法における証拠調べの範囲、順序および限度は、原則として事実裁判所の裁量に属する。したがって、裁判所が必要でないと認める証拠の請求を却下することは、その裁量権の逸脱・濫用にあたらない限り、適法である。
重要事実
被告人が詐欺等の罪に問われた事案において、第一審および原審(控訴審)は、弁護人が請求した証人の尋問を却下した。これに対し弁護人側は、詐取した物件が特定されていない等の理由不備や、証人尋問の却下が違法であること、さらに人種的偏見に基づく裁判であることなどを主張して上告した。
あてはめ
まず、証拠調べの範囲・限度は原事実裁判所の裁量に属する事柄であり、本件において原審が証人尋問の請求を却下した判断は、裁量の範囲内であって違法とはいえない。次に、詐取した物件の表示については、別表の品名欄に「主食」である旨が明示されており、目的物件が不明確であるという理由不備の指摘は当たらない。さらに、人種的偏見に基づく裁判であるとの主張については、これを裏付ける資料が記録上存在しないため、採用できない。
結論
本件証拠調べの却下は裁判所の裁量の範囲内であり適法である。また、物件の特定等にも不備はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、証拠決定に関する裁判所の広範な裁量を認めた基本的判例である。答案上は、証拠請求の却下が「必要性がない」としてなされた場合の適法性を論じる際、裁判所の裁量権を認める根拠として引用できる。
事件番号: 昭和28(あ)2453 / 裁判年月日: 昭和30年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所に対し被告人が請求したすべての証人を取り調べる義務を課すものではなく、証拠調べの採否は裁判所の裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:被告人が第一審において重要な立証のために証人尋問を請求したが、第一審裁判所はその請求を却下した。その後、原審(控訴審)は量刑不当を理由に第…
事件番号: 昭和27(あ)546 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に反対尋問の機会が与えられた証人について、公判供述ではなく検察官面前調書の記載を証拠として採用し事実認定の資料とすることは、裁判所の適法な証拠の取捨選択の範囲内である。 第1 事案の概要:被告人Bは、証人Cに対する第一審での証拠調べにおいて反対尋問の機会を与えられていた。しかし、原審および第…