判旨
証人申請の取捨選択は事実審の裁量に属し、共犯の疑いがある者の所在が判明したとしても、直ちにその尋問が義務付けられるものではない。他の証拠関係に照らして尋問の必要がないと認めて申請を却下することは、防御権を不当に制限する違法とはいえない。
問題の所在(論点)
事実審が一度行った証拠決定を取り消し、共犯の疑いがある重要な者の証人申請を却下することが、被告人の防御権(弁護権)を不当に制限する違法な裁量権の行使に当たるか。
規範
証人申請を適当に取捨選択することは事実審の広範な裁量権に属する。したがって、特定の者の所在が明らかになったとしても、裁判所が他の証拠関係から尋問の必要がないと判断し、一旦した証拠決定を取り消して申請を却下することは、その措置が不合理でない限り、被告人の防御権を不当に制限する違法とはならない。
重要事実
被告人は、代金の即時支払を約束しながら全額を支払う意思がなく、品物を処分した後に大幅な値切り交渉を行う意図をもって取引を行った。原審において被告人側は、事件の主謀者と主張するAを証人として尋問したが、共犯の疑いがあるBについては、当初所在不明であった後に所在が明らかになった。しかし、原審は既に多くの証拠を取り調べていたことから、Bの証拠決定を取り消し、尋問申請を却下した。
あてはめ
本件において原審は、既に多数の証拠を取り調べているほか、被告人側が主謀者と主張するAについても証人尋問を実施している。Bの所在が判明したとはいえ、既存の証拠関係から判断してBの尋問を不要と判断した原審の措置は、証拠の取捨選択における裁量の範囲内であり、不合理とは認められない。また、被告人自身が公判廷において「代金の全額を支払う意思がなかった」旨を事実上自認する供述をしており、原判決の認定は十分な証拠に基づいている。
結論
原審の証拠却下は、裁量権の範囲内にある適法なものであり、被告人の防御権を侵害するものではないため、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の証拠採否に関する裁判所の裁量を認めた基本的判例である。特に、一旦採択した証拠決定の取消しや、重要な共犯者の尋問請求を却下する場合であっても、他の証拠によって事実認定が可能であれば裁量権の逸脱とはならないことを示している。答案上は、証拠調べ請求の却下の適法性が問われる場面で、裁量の幅を示す規範として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4047 / 裁判年月日: 昭和27年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、供述証拠の使用に際して常に公判での証人尋問を要求するものではなく、証拠調請求の採否は裁判所の合理的な自由裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:被告人側から証人Aの取調べ請求がなされたが、原審(控訴審)はこの請求を却下し、直ちに審理を終結させた。弁護人は、これが憲法37条2項前…
事件番号: 昭和26(れ)330 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べの範囲および限度は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられており、特定の証人の尋問請求を却下したとしても、直ちに違法となるものではない。 第1 事案の概要:被告人が詐欺等の罪に問われた事案において、第一審および原審(控訴審)は、弁護人が請求した証人の尋問を却下した。これに対し弁護人側は、詐取…