判旨
刑事訴訟における証人尋問の請求を採択するか否かは、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられており、証人を喚問しないことが直ちに弁護権の侵害を構成するものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、裁判所が弁護人の申請した証人の尋問を行わないことが、弁護権を侵害する違法な措置に当たるか(証拠調べの採否に関する裁判所の裁量権の範囲)。
規範
弁護人が申請した証人を喚問するか否かは、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。裁判所が証拠の必要性等を考慮して尋問の要否を判断することは適法であり、不採択の結果のみをもって直ちに防御権の侵害や違法な措置と解することはできない。
重要事実
刑事被告人の弁護人が第一審において証人尋問を申請したが、第一審裁判所は当該証人の喚問を行わなかった。これに対し、弁護側は証人を喚問しなかったことが弁護権を奪う違法な措置であると主張し、また控訴審(原判決)においても事実誤認や判断遺脱の違法があるとして上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、第一審裁判所が弁護人申請の証人を喚問しなかったことは、証拠調べの要否を判断する事実審の裁量権の行使として認められる。また、原判決は「事実誤認ないし証拠法則違反はない」と判示しており、第一審の採証の不当性を主張する控訴趣意に対しても適切に判断を下している。したがって、判断遺脱等の違法は存在せず、裁量権の逸脱も認められない。
結論
事実審裁判所が証人尋問を行わなかったとしても、それが裁量の範囲内である限り違法ではなく、弁護権の侵害にも当たらないため、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法298条に基づく証拠調べの採否に関する裁判所の広範な裁量を認めた判例。答案上は、証拠請求の却下が被告人の防御権を不当に制限する「裁量の逸脱・濫用」に該当するかを検討する際の基礎として用いる。ただし、具体的・個別的な却下理由の当否には立ち入っていないため、実務上は必要性の有無を詳細に検討する必要がある。
事件番号: 昭和26(あ)3737 / 裁判年月日: 昭和28年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、当事者から申請のあった証人のすべてを必ずしも取り調べなければならないものではない。 第1 事案の概要:被告人Bの弁護人が証人の取調べを申請したが、裁判所がその一部または全部を採用しなかった。これに対し、弁護人が証人取調べの必要性を主張して上告した事案である。 第2 問題の所在(論点):刑…