判旨
不当な証拠採用が認められる場合であっても、当該証拠を除外した他の証拠によって犯罪事実が十分に認定できるときは、判決に影響を及ぼすべき著しい誤りがあるとはいえず、刑訴法411条の適用による破棄を要しない。
問題の所在(論点)
証拠採用の手続に違法がある疑いがある場合において、当該証拠を排除しても他の証拠により有罪の認定が十分に可能なとき、刑訴法411条により職権で原判決を破棄すべきか。
規範
刑訴法411条(職権による破棄)を適用すべきか否かの判断において、特定の証拠の取り調べに違法があったとしても、その余の証拠によって犯罪事実が優に認定し得る場合には、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
重要事実
被告人両名につき、第一審判決がBの検察事務官に対する供述調書を含む複数の証拠を総合して犯罪事実を認定した。弁護人は当該供述調書の証拠採用の違法を主張して上告したが、第一審判決では当該調書以外にも複数の証拠(一乃至五の他の一証拠)が挙げられていた。
あてはめ
仮にBの供述調書を証拠としたことに違法があったとしても、第一審判決は当該調書以外にも複数の証拠を併せて提示している。これらの残余の証拠を検討すれば、本件犯罪事実は優に認定し得ると判断される。したがって、違法な証拠の存在が直ちに判決の結果を左右するものではなく、職権破棄の要件を満たすほどの重大な瑕疵とはいえない。
結論
本件各上告を棄却する。証拠採用に違法があったとしても、他の証拠により犯罪事実が認定できる以上、刑訴法411条を適用すべき場合には当たらない。
実務上の射程
証拠の関連性や証拠能力に争いがある事案において、仮にその証拠が排除されたとしても結論が変わらない(=無害な過誤)といえる場合には、上告審における破棄理由にならないことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和26(れ)2228 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
別件についての原審相被告人Aの弁護人の上告論旨引用は許されない。
事件番号: 昭和27(あ)6316 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
控訴審が、第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り控訴審として改めて事実を認定するを要しない。
事件番号: 昭和27(あ)546 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に反対尋問の機会が与えられた証人について、公判供述ではなく検察官面前調書の記載を証拠として採用し事実認定の資料とすることは、裁判所の適法な証拠の取捨選択の範囲内である。 第1 事案の概要:被告人Bは、証人Cに対する第一審での証拠調べにおいて反対尋問の機会を与えられていた。しかし、原審および第…
事件番号: 昭和26(れ)939 / 裁判年月日: 昭和26年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の量刑不当の主張は刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、また、記録を精査しても同法411条を適用して原判決を破棄すべき顕著な事由は認められない。 第1 事案の概要:被告人が量刑不当を理由として上告を申し立てた事案であるが、提出された上告趣意書の内容は、単に刑の量定が重すぎるという主張にとど…
事件番号: 昭和28(あ)4831 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一人に対する有罪判決が、証拠能力のない証拠を事実認定に用いた訴訟手続の法令違反により破棄された場合であっても、その違法が当然に他の共同被告人の事実認定に影響を及ぼし、上告理由となるものではない。 第1 事案の概要:本件において、被告人とともに審理を受けていた相被告人の有罪部分が、原審(控訴…