判旨
共犯者の一人に対する有罪判決が、証拠能力のない証拠を事実認定に用いた訴訟手続の法令違反により破棄された場合であっても、その違法が当然に他の共同被告人の事実認定に影響を及ぼし、上告理由となるものではない。
問題の所在(論点)
共同被告人の一人に対する判決において証拠能力のない証拠が採用されたという訴訟手続違反が、他の被告人に対する事実認定の適法性に影響を及ぼすか。
規範
共同被告人の一人について、証拠能力のない証拠を事実認定に用いたという訴訟手続の法令違反が存在し、それにより当該被告人の有罪判決が破棄されたとしても、その違法が他の共同被告人に対する事実認定の適法性に直接波及するものではない。
重要事実
本件において、被告人とともに審理を受けていた相被告人の有罪部分が、原審(控訴審)によって破棄差し戻しとなった。その理由は、相被告人に対して証拠能力が認められない供述調書までも事実認定の証拠に採用したという訴訟手続違反であった。これに対し、本件被告人側は、相被告人の判決に認められた違法が、自身の事実認定においても違法を来すものであると主張して上告した。
あてはめ
原審が支持した第一審判決において、相被告人に関する部分が破棄されたのは、あくまで「同被告人に対する関係」において証拠となし得ない供述調書を証拠に加えた点に求められる。この訴訟手続上の違法は、当該相被告人の権利利益を保護するためのものであり、証拠構造や立証過程が異なる本件被告人との関係において、当然に事実認定の違法を招くものとはいえない。したがって、本件被告人に対する事実認定に採証法則違反等の違法は認められない。
結論
相被告人に対する訴訟手続の違法は本件被告人の事実認定に影響しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)5407 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の検察官面前供述調書は、当該被告人との関係において刑事訴訟法321条1項にいう「被告人以外の者」の供述を録取した書面に該当し、同項各号の要件を満たす限り証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人と共同被告人が起訴された事件において、第一審裁判所は共同被告人の供述調書を証拠として採用…
共犯事件における証拠の個別性を確認する判例である。伝聞例外の要件充足性などが被告人ごとに異なる場合において、一部の被告人について生じた手続的違法が直ちに連鎖するわけではないことを示す。ただし、公判分離の有無や証拠の共通性の程度によっては別途検討を要する点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)2196 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当な証拠採用が認められる場合であっても、当該証拠を除外した他の証拠によって犯罪事実が十分に認定できるときは、判決に影響を及ぼすべき著しい誤りがあるとはいえず、刑訴法411条の適用による破棄を要しない。 第1 事案の概要:被告人両名につき、第一審判決がBの検察事務官に対する供述調書を含む複数の証拠…
事件番号: 昭和30(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
贈賄者が別件で無罪になつたからといつて、その別件の既判力が本件収賄等被告事件に及ぶ道理がない。
事件番号: 昭和28(あ)4636 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 棄却
一 控訴審が控訴趣意として主張された量刑不当について判断せず、他の控訴趣意を理由あるものとして第一審判決を破棄自判して刑を言渡したからとて、審理不尽であるということはできない。 二 量刑不当の控訴趣意は、第一審判決を破棄すべき理由として主張されたのであるから、他の控訴趣意が理由あるものとして第一審判決が破棄される以上、…
事件番号: 昭和26(あ)5317 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴事実に示された偽造の事実を、原判決が偽造教唆の事実として認定・判示することは、判決に影響を及ぼすような判断遺脱には当たらない。 第1 事案の概要:第一審判決の第四において「偽造」に相当するとされていた公訴事実につき、原判決がこれに基づき「偽造教唆」と認定判示して判断を示した事案である。上告人は…