判旨
公訴事実に示された偽造の事実を、原判決が偽造教唆の事実として認定・判示することは、判決に影響を及ぼすような判断遺脱には当たらない。
問題の所在(論点)
公訴事実に掲げられた偽造の事実に対し、裁判所が偽造教唆の事実を認定・判示することが、訴訟法上の判断遺脱や審判対象の逸脱に該当するか。
規範
訴因(公訴事実)と判決の認定との間に差異がある場合であっても、それが実質的に同一の犯罪事実の範囲内であり、かつ被告人の防御に不当な不利益を与えない限り、訴因変更の手続きを経ることなく判決で認定することが許容される。
重要事実
第一審判決の第四において「偽造」に相当するとされていた公訴事実につき、原判決がこれに基づき「偽造教唆」と認定判示して判断を示した事案である。上告人はこれが判断遺脱であると主張した。
あてはめ
原判決は、公訴事実に示された偽造の事実関係を前提としつつ、犯行への関与態様を教唆として認定したものである。これは公訴事実の範囲内での認定といえ、判断を遺脱したものとは認められない。また、記録上も刑訴法411条を適用して破棄すべき事由は存在しない。
結論
本件認定に判断遺脱は認められず、刑訴法405条の上告理由に当たらないため、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、実行行為そのもの(偽造)から共犯関係(教唆)への認定変更について、端的に判断遺脱を否定している。答案上は、訴因変更の要否(312条1項)の論点において、実行犯と教唆犯という態様の相違が、事実の同一性や被告人の防御に与える影響を検討する際の傍証として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)249 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
記録によれば原審第一回公判期日において検察官は第一審判決の事実摘示に基いて公訴事実の陳述をなし、そこには公文書偽造の事実の摘示はあるが、偽造公文書行使の事実の記載録のないことは所論のとおりである。しかし行使の目的をもつてする公文書の偽造とその偽造公文書の行使とは刑法第五四条第一項後段の牽連犯として科刑上の一罪に属するも…
事件番号: 昭和27(あ)6438 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成否について、事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらないと判示し、原判決の判断を維持した。 第1 事案の概要:被告人がAらと共謀した事実、およびAに作成権限がない文書を作成した事実について、第一審および控訴審で認定された。弁護人は、Aには作成権限があったこと、および共謀の事…
事件番号: 昭和25(れ)868 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の援用において「判示同旨の供述」と示すことは、判示内容と異なる部分を証拠から除外する趣旨を含む。また、公務員の了解を得ていたとの主張があっても、客観的事実に基づき「ほしいままに」作成したと認定することは、裁判所の自由裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は、肥料配給公団に関連する証明書に書き…
事件番号: 昭和28(あ)4831 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一人に対する有罪判決が、証拠能力のない証拠を事実認定に用いた訴訟手続の法令違反により破棄された場合であっても、その違法が当然に他の共同被告人の事実認定に影響を及ぼし、上告理由となるものではない。 第1 事案の概要:本件において、被告人とともに審理を受けていた相被告人の有罪部分が、原審(控訴…