判旨
証拠の援用において「判示同旨の供述」と示すことは、判示内容と異なる部分を証拠から除外する趣旨を含む。また、公務員の了解を得ていたとの主張があっても、客観的事実に基づき「ほしいままに」作成したと認定することは、裁判所の自由裁量に属する。
問題の所在(論点)
1. 被告人の供述を証拠として援用する際、判示と異なる部分を除外する旨の明示的な説明が必要か。2. 公団係員の了解があったと主張される状況下で、文書への書き入れを「ほしいままに」なされたと認定することが許されるか(採証法則違反の有無)。
規範
判決において被告人の供述を証拠として援用する際、「判示内容と同一の趣旨の供述」として引用する手法は、判示事実と矛盾する供述部分を証拠として採用しない趣旨を包含する。また、事実認定(「ほしいままに」行った等の主観的態様を含む)は、経験則に反しない限り、事実審裁判所の自由な証拠選択と評価(自由裁量)に委ねられる。
重要事実
被告人は、肥料配給公団に関連する証明書に書き入れを行った。被告人側は、この書き入れは肥料配給公団係員の了解を得た上で行ったものであると主張したが、原審はこれを「ほしいままに(擅に)」行ったものと認定した。また、原審は被告人の公判供述を証拠として採用する際、判示事実と異なる部分を具体的に除外する説明を付さずに援用した。
あてはめ
1. 証拠の援用について、原審が「判示同旨の供述」として引用したことは、判示と異なる供述部分を採用しないことを含意しており、手続上の不備はない。2. 事実認定について、被告人が了解を得たと主張しても、記録上の証拠を総合して「ほしいままに」行ったと判断した原審の認定は、経験則に反するものとは認められない。これは裁判所の合理的な証拠評価の範囲内である。
結論
原判決の証拠援用手法および事実認定に違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和25(れ)1075 / 裁判年月日: 昭和25年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証人尋問の際に、便宜上関連する別事件の記録を参照したとしても、職権により当該記録を証拠として採用したものではなく、尋問結果(証言内容)に基づいて事実を認定している限り、証拠裁判主義に反しない。 第1 事案の概要:原審の第2回公判において、証人Aの尋問が行われた。その際、裁判所は本件と関連し…
実務上の射程
実務上、被告人供述の一部のみを判示事実に合致する範囲で採用する手法(一部採用・一部不採用)の有効性を確認したものである。また、文書偽造罪等における「ほしいままに」といった規範的評価を含む事実認定が、第一審・控訴審の専権であることを再認する際に参照される。
事件番号: 昭和27(あ)5353 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が憲法違反を主張するものであっても、その実質が単なる訴訟法違反や量刑不当の主張に帰する場合には、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bが、それぞれ弁護人を通じて最高裁判所に上告を申し立てた事案である。弁護人らは上告趣意において「憲法違反」を主張…
事件番号: 昭和22(れ)18 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】鑑定の結論を導く詳細な理由説明が乏しい場合であっても、それが直ちに実験則に反するとまではいえず、他の証拠と総合して事実認定の資料とすることは許容される。また、証拠の取捨選択や証拠調べの限度の決定は、原則として事実審の裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法違反、公文書偽造等の罪で起訴さ…