判旨
被告人が自ら作成した上申書は、旧刑事訴訟法343条に規定される「被告人その他の者の供述を録取した書類」には該当しない。
問題の所在(論点)
被告人自身が作成した書面(上申書)が、伝聞法則等によって証拠能力が制限される「供述を録取した書類」に該当するか。
規範
供述者本人が任意に作成した書面は、他者の供述を第三者が聞き取って記載した「供述録取書」には当たらない。したがって、供述録取書に関する証拠能力の制限規定(旧刑事訴訟法343条等)は、本人が直接作成した書面には適用されない。
重要事実
被告人Aが、自ら内容を記載した「上申書」を証拠として提出した。これに対し、弁護人は当該上申書が旧刑事訴訟法343条(現行法の伝聞法則・供述録取書に関する規定に相当)にいう「被告人その他の者の供述を録取した書類」に該当し、証拠能力が認められないと主張して上告した。
あてはめ
本件の上申書は、被告人Aが自ら任意に作成したものである。これは第三者がAの供述を録取したものではなく、A自身の思想や事実認識を直接書面化したものである。したがって、旧刑事訴訟法343条が予定する「供述録取書」としての性質を欠いているといえる。
結論
本件上申書は供述録取書に当たらないため、旧刑事訴訟法343条を根拠に証拠能力を否定することはできず、上告は棄却される。
実務上の射程
現行刑訴法下においても、被告人が自ら作成した上申書や日記等は「供述録取書(321条1項各号)」ではなく「供述書(322条1項)」として扱われる。本判例は、作成者本人が直接書面化した場合と、他者が録取した場合を区別する実務上の基本原則を示しており、伝聞例外の適用条文を選択する際の判断基準として活用できる。
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