判旨
捜査報告書に添付された一覧表が独立した証拠書類に当たらない場合であっても、被告人が公判廷においてその記載内容を引用して自らの供述内容としたときは、当該一覧表を被告人の供述内容を明確にするための資料として判決に引用することは適法である。
問題の所在(論点)
証拠物または証拠書類(旧刑訴法342条)として適法な証拠調べを経ていない書面を、被告人の公判供述の内容を明確にする目的で判決に引用することが許されるか。
規範
証拠物または証拠書類として適法に証拠調べが行われていない書面であっても、被告人が公判廷において当該書面の記載内容と自己の供述内容が合致する旨を述べた場合には、被告人の供述内容を特定・明確化するための引用資料として用いることができる。
重要事実
被告人は詐欺罪で起訴された。原審において、司法検察吏作成の捜査報告書に添付された「一覧表」が、証拠として裁判所に提出されていなかった。しかし、被告人は公判廷において、本件詐欺の事実は当該一覧表の記載通りである旨を供述した。原判決は、証拠説明の中で被告人の公判供述と並べて「司法検察吏作成の一覧表」を引用し、有罪の認定を行った。
あてはめ
本件の一覧表は、捜査報告書に添付されたものに過ぎず、訴訟関係人から証拠として裁判所に提出された「証拠書類」には該当しない。しかし、被告人が原審公判において「一覧表の記載通り相違ない」と供述している以上、原判決が証拠説明中にこれを掲記したのは、独立した証拠として採用したのではなく、被告人の供述内容を具体的に明確化するための引用に止まる。したがって、伝聞法則や証拠調べの手続に違反するものではない。
結論
被告人の供述内容を特定するための引用として許容され、原判決に違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(あ)291 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】司法警察員に対する供述調書は、その記載内容を証拠とする場合には刑事訴訟法305条の「証拠書類」に該当し、同法306条・307条の「証拠物」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は公文書偽造・行使等の罪で起訴された。第一審において、司法警察員が作成した被告人の供述調書が証拠として採用されたが、上…
適法な証拠調べを経ていない書面(いわゆる未提出資料)であっても、被告人の公判供述の「一部」として取り込まれた場合には、その供述の特定のために判決書で引用可能である。ただし、あくまで供述内容を補完する資料としての位置付けに限定され、書面そのものの証拠能力を認めるものではない点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(あ)2011 / 裁判年月日: 昭和25年12月22日 / 結論: 棄却
刑訴規則第一八七条第一項は、控訴審には準用されない。
事件番号: 昭和28(あ)3044 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例違反を理由とする上告において、その前提となる事実が事実審の認定に反する場合には、上告理由として適法なものとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が詐欺罪等の罪に問われた事案において、弁護人が判例違反を理由に上告を申し立てた。しかし、弁護人が上告趣意において前提としていた「詐欺の事実」は、原…
事件番号: 昭和26(あ)1977 / 裁判年月日: 昭和26年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の犯罪事実に対し、証拠の標目を一括して挙示しても、判文と記録を照合してどの証拠がどの事実を認定したか明白であれば、証拠挙示に違法はない。 第1 事案の概要:被告人の二個の犯罪事実を認定した第一審判決に対し、被告人が「証拠の標目を各事実ごとに分けることなく一括して挙げている点は、東京高等裁判所の…