判旨
司法警察員に対する供述調書は、その記載内容を証拠とする場合には刑事訴訟法305条の「証拠書類」に該当し、同法306条・307条の「証拠物」には当たらない。
問題の所在(論点)
司法警察員に対する供述調書を、記載内容を証拠として用いる場合、刑事訴訟法上の「証拠書類」と「証拠物」のいずれとして取り扱うべきか。また、同一の葉書上になされた複数の偽造行為を一通の公文書偽造として起訴した場合の起訴状の効力(審判の範囲)が問題となった。
規範
刑事訴訟法305条に規定される「証拠書類」とは、その記載内容の真実性を証拠とする書面を指す。これに対し、証拠物とはその存在や形状自体が証拠となるものを指し、供述調書がその内容を証拠として用いられる場合には、本質的に証拠書類として取り扱うべきである。
重要事実
被告人は公文書偽造・行使等の罪で起訴された。第一審において、司法警察員が作成した被告人の供述調書が証拠として採用されたが、上告審において弁護人は、当該供述調書は証拠書類ではなく刑事訴訟法306条・307条にいう「証拠物」として取り扱うべきであると主張して、原判決の法令解釈の誤りを訴えた。
あてはめ
最高裁は、供述調書の記載内容が証拠となる場合は、刑事訴訟法305条にいう証拠書類に当たると判断した。本件の調書も内容が証拠となるものであるから、証拠物(306条、307条)には当たらないとした先行判例を引用し、原判決の見解を正当とした。また、起訴状の記載についても、一通の葉書上に東京地検名義の呼出状と郵便局名義の文書が偽造されていた点につき、「公文書一通」の偽造として起訴されていれば、その両方の事実が起訴の範囲に含まれると認定した。
結論
司法警察員に対する供述調書は証拠書類に該当する。また、起訴事実に含まれる以上、審判の請求を受けない事件につき判決した違法はなく、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和25(れ)1426 / 裁判年月日: 昭和25年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜査報告書に添付された一覧表が独立した証拠書類に当たらない場合であっても、被告人が公判廷においてその記載内容を引用して自らの供述内容としたときは、当該一覧表を被告人の供述内容を明確にするための資料として判決に引用することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は詐欺罪で起訴された。原審において、司…
実務上の射程
伝聞証拠の取調べ方式を決定する際の基礎となる判例である。答案上は、供述を録取した書面を証拠とする場合は証拠書類として305条に基づき朗読等の手続が必要であることを示す際に活用する。また、起訴状の記載から審判対象を確定する際の解釈指針としても参照し得る。
事件番号: 昭和26(れ)553 / 裁判年月日: 昭和27年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴事実を特定するに際し、司法警察官の事件送致書記載の事実を引用することは許容され、また内容を明らかにするための紙片の貼付も起訴状の方式に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が詐欺罪等で起訴された際、検察官が提出した公判請求書(起訴状)には、公訴事実として司法警察官の事件送致書に記載された犯罪事…
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…
事件番号: 昭和27(あ)5407 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の検察官面前供述調書は、当該被告人との関係において刑事訴訟法321条1項にいう「被告人以外の者」の供述を録取した書面に該当し、同項各号の要件を満たす限り証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人と共同被告人が起訴された事件において、第一審裁判所は共同被告人の供述調書を証拠として採用…
事件番号: 昭和28(あ)3367 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実在しない架空の公務員名義を用いた文書であっても、一般人が公務員により作成された真正な文書と誤認するに足りる外観を備えている場合には、公文書偽造罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、実際には存在しない「A検査員B」という架空の公務員名義を用いて文書を作成し、これを行使した。第一審判決および原…