判旨
教唆犯として起訴・認定された事案において、控訴審が同一の基本的構成事実の範囲内で共謀共同正犯と認定を変更することは、適用法条に変更がなく終局の判断に影響を及ぼさない限り、適法である。
問題の所在(論点)
第一審が認定した教唆の事実に対し、控訴審が訴因変更手続を経ることなく(あるいは事実認定の範囲内で)共謀共同正犯の成立を認めることが、訴訟法上の判断遺脱や違法な事実認定に当たるか。
規範
訴因(または認定事実)の変更については、構成事実の基本的同一性が認められ、かつ被告人の防御に実質的な不利益を与えない限り、裁判所は審理の結果に基づき認定を変更することができる。特に教唆と共謀共同正犯の間での認定変更は、いずれも刑法の共犯規定が適用され、処断刑の範囲にも差異がないため、審判対象の同一性を逸脱しない限り違法とはならない。
重要事実
被告人は外国人登録原票の偽造に関し、共犯者Aを通じて係吏Bに教唆した、あるいはこれと共謀して実行したとして起訴された。第一審判決は被告人を教唆犯と認定したが、控訴審(原審)は証拠に基づき、被告人・A・Bの間に意思の連絡があったと肯定し、教唆ではなく共謀共同正犯の事実関係があると認定して控訴を棄却した。これに対し弁護人は、第一審が認めた教唆の事実を原審が勝手に共謀に変更したことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
原審は第一審が挙げた証拠を再評価し、被告人とA・Bとの間に本件登録原票作成に関する意思の連絡(共謀)があったことを肯定している。被告人側は、教唆も共謀も存在しないと主張して控訴していたのであるから、原審がその主張を排して共謀を認めたことは判断の遺脱に当たらない。また、教唆から共同正犯への認定のくいちがいは、適用される刑法の本条が同一である上、共同正犯として起訴されている本件においては、終局の判断に影響を及ぼす重大な違法とはいえない。
結論
教唆犯から共謀共同正犯への認定変更は、本件の訴訟経過に照らせば適法であり、原判決に違法はない。
事件番号: 昭和26(あ)5317 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴事実に示された偽造の事実を、原判決が偽造教唆の事実として認定・判示することは、判決に影響を及ぼすような判断遺脱には当たらない。 第1 事案の概要:第一審判決の第四において「偽造」に相当するとされていた公訴事実につき、原判決がこれに基づき「偽造教唆」と認定判示して判断を示した事案である。上告人は…
実務上の射程
共犯形態(教唆・幇助・共同正犯)間の認定変更の可否に関する射程を有する。防御権の行使に実質的な不利益がない限り、裁判所は訴因変更なしにこれらを認定し得るとする実務の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和27(あ)6438 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成否について、事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらないと判示し、原判決の判断を維持した。 第1 事案の概要:被告人がAらと共謀した事実、およびAに作成権限がない文書を作成した事実について、第一審および控訴審で認定された。弁護人は、Aには作成権限があったこと、および共謀の事…
事件番号: 昭和29(あ)3383 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で適法になされた追起訴、公訴取消し、訴因変更等を経て判決が下された場合、被告人側が異議を述べず手続が進んだ以上、上告審においてこれを訴訟法違反と主張することはできない。 第1 事案の概要:被告人は詐欺及び同未遂等の罪で起訴された。第一審の手続において、検察官による追起訴や訴因・罰条の追加、変…
事件番号: 昭和27(あ)6146 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯が成立するためには、事前の打合せや意思の連絡が必要であり、これらが認められない場合には単独犯として処理されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、共犯者が存在する共犯事件であると主張して上告したが、原審(または記録上)では、当該事件において当事者間での事前の打合せ等は認められず、そ…