判旨
被告人が第一審の事実認定に不服がなく量刑のみを争う場合、控訴審は被告人の不服のない限度で第一審判決の認定した事実を基礎として判決をすることができる。
問題の所在(論点)
控訴審において事実認定の争いがない場合、第一審の認定事実をそのまま援用して判決を下すことが適法か、あるいは独自の事実認定プロセスを要するか。
規範
控訴審において、被告人が第一審判決の事実認定に不服を申し立てず、単に量刑の不当のみを主張している場合には、裁判所は被告人の不服のない限度において第一審判決の認定した事実をそのまま基礎として審判を行うことが許される。
重要事実
被告人A及びBは、第一審判決に対して控訴を申し立てた。しかし、その控訴趣意は、第一審の事実認定には何ら不服がなく、単に量刑についてさらに寛大な裁判を求めるというものであった。原審(控訴審)は、当時の特例規則に基づき、被告人に不服のない限度で第一審の認定事実に基づき判決を言い渡した。これに対し被告人側は、憲法違反や判例違反を理由に上告した。
あてはめ
本件において、被告人らの控訴趣意は、公判調書の記載からも明らかな通り、第一審の事実認定を全面的に受け入れた上で量刑の軽減のみを求めるものであった。このような場合、控訴審が「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」に従い、被告人が争っていない事実を基礎として審理を簡略化し、その旨を判決で明らかにすることは適法である。したがって、前提事実を争わないままなされた憲法違反等の主張は、前提において誤りがあるといえる。
結論
被告人に不服のない事実の範囲内で第一審判決の認定事実を基礎とした原判決に違法はなく、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)6316 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
控訴審が、第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り控訴審として改めて事実を認定するを要しない。
本判決は旧法下の特例規則に関するものであるが、控訴審の事後審的性格において、控訴趣意に含まれない事実誤認を原則として審判対象外とする現行法の運用(刑訴法392条、400条等)の基礎となる考え方を示している。答案上は、控訴審の審判対象が控訴趣意によって画される範囲に限定されることの根拠として参照し得る。
事件番号: 昭和26(あ)4721 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予を付さないことが憲法13条に違反するとの主張、および犯情による科刑の差異が憲法14条に違反するとの主張は、いずれも上告適法の理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cに対し、下級審において有罪判決(執行猶予なし)が言い渡された。被告人らは、執行猶予を付さないことが憲法13条に…
事件番号: 昭和26(れ)1314 / 裁判年月日: 昭和26年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が刑事訴訟法405条に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき事由も見当たらないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てたが、添付された判決文からは被告人が起訴された具体的な罪名や犯罪事実、および弁護人が主張した上告趣意…
事件番号: 昭和27(あ)5353 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が憲法違反を主張するものであっても、その実質が単なる訴訟法違反や量刑不当の主張に帰する場合には、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bが、それぞれ弁護人を通じて最高裁判所に上告を申し立てた事案である。弁護人らは上告趣意において「憲法違反」を主張…