控訴審が、第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り控訴審として改めて事実を認定するを要しない。
控訴審が第一審判決の量刑不当を理由として破棄自判した場合と犯罪事実の認定
刑訴法381条,刑訴法397条,刑訴法400条
判旨
控訴審が量刑不当を理由に第一審判決を破棄自判する場合、第一審の事実認定を正当と認める限り、改めて事実の摘示をする必要はなく、第一審の確定事実に対し法律を適用すれば足りる。
問題の所在(論点)
控訴審が量刑不当を理由に破棄自判を行う場合、判決書において改めて事実の摘示を行う必要があるか。第一審の事実認定に争いがない場合の事実摘示義務の要否が問題となる。
規範
控訴審において、控訴趣意が第一審判決の事実認定を正当としつつ単に量刑不当を主張するものである場合、当該主張を理由として破棄自判(刑事訴訟法400条但書)するに際しては、裁判所は改めて事実を摘示することを要せず、第一審判決の確定した事実に法律を適用することで足りる。
重要事実
被告人が第一審判決の事実認定を正当とした上で、量刑不当のみを理由として控訴を提起した事案。控訴審は、量刑不当の主張を認め、第一審判決を破棄して自判したが、その判決において改めて犯罪事実の摘示を行わなかった。これに対し被告人側が、事実の摘示がないことは憲法31条、37条及び訴訟法に違反するとして上告した。
事件番号: 昭和26(れ)587 / 裁判年月日: 昭和27年3月14日 / 結論: 棄却
法令合議事件を一人の裁判官が審判した場合は、単なる訴訟手続の法令違反であつて、事物管轄の規定に違反したものとして取り扱うべきでない。
あてはめ
本件では、控訴審の弁護人が控訴趣意において、第一審判決の事実認定を正当と認めつつ、量刑の不当のみを主張している。このような場合、控訴審が量刑不当を理由に破棄自判を行うにあたっては、第一審が既に確定させた事実関係を前提として法律を適用すれば十分である。したがって、判決書において重ねて事実を摘示し直さなかったとしても、訴訟法上の違法があるとはいえない。
結論
控訴審が量刑不当を理由に破棄自判する場合、第一審の事実認定を正当と認める限り、改めて事実の摘示をする必要はない。
実務上の射程
本判決は、控訴審における自判の際、第一審の認定事実に変更がない場合の事実摘示の省略を許容している。実務上、控訴審判決が「当裁判所の認定した罪となるべき事実は、第一審判決のそれと同一であるからこれを引用する」といった形式をとる際の根拠の一つとなるが、答案上は判決の構成要件(刑訴法335条1項)との関係で、事実摘示が簡略化される場面を説明する際に言及し得る。
事件番号: 昭和33(あ)701 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所が事実の取調べをすることなく、訴訟記録と第一審の証拠のみに基づき、第一審の量刑を不当として被告人に不利益に変更することは、憲法および刑訴法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、第一審は懲役1年の判決を言い渡した。これに対し検察官が量刑不当を理由に控訴したところ、控訴審(原審)は…
事件番号: 昭和25(れ)1419 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告は第二審の判決に対してなされるべきものであり、第一審判決の違法のみを主張し第二審判決の違法を主張しない上告理由は不適法である。 第1 事案の概要:被告人側が、第二審(控訴審)の判決ではなく第一審の判決に違法がある旨のみを主張して上告を提起した事案。 第2 問題の所在(論点):第一審判決の違法の…
事件番号: 昭和26(れ)2228 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
別件についての原審相被告人Aの弁護人の上告論旨引用は許されない。
事件番号: 昭和26(あ)2196 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当な証拠採用が認められる場合であっても、当該証拠を除外した他の証拠によって犯罪事実が十分に認定できるときは、判決に影響を及ぼすべき著しい誤りがあるとはいえず、刑訴法411条の適用による破棄を要しない。 第1 事案の概要:被告人両名につき、第一審判決がBの検察事務官に対する供述調書を含む複数の証拠…