法令合議事件を一人の裁判官が審判した場合は、単なる訴訟手続の法令違反であつて、事物管轄の規定に違反したものとして取り扱うべきでない。
法定合議事件を一人の裁判官が審判した場合と訴訟手続の法令違反
裁判所法26条,旧刑訴法450条
判旨
起訴状に罪名として記載がなくとも、公訴事実に当該犯罪の構成要件に該当する事実が記載されていれば、その罪についても公訴の提起があったものと認められる。また、第一審が単独制で審理されるべきでない事件を単独制で審理したとしても、控訴審で実質的な審理が尽くされていれば、直ちに差し戻す必要はない。
問題の所在(論点)
1. 起訴状に罪名の記載がない犯罪事実について、裁判所は審判することができるか(審判対象の範囲)。2. 合議体で審理すべき事件を単独制で審理した第一審の手続的違法は、必ず差し戻しを要する事由となるか。
規範
1. 審判対象の画定:起訴状の「罪名」欄の記載にかかわらず、「公訴事実」に具体的な構成要件に該当する事実の記載があれば、その罪についても公訴の提起があったと解する。2. 構成の違法と破棄自判:第一審が合議体で審理すべき事件を単独制で審理した手続的違法があっても、控訴審が管轄権を有する高等裁判所であり、かつ実質的な審理(旧法下の覆審等)を経ている場合には、事物管轄の誤りと同様には扱わず、控訴審が自ら審判しても違法ではない。
重要事実
被告人両名は、詐欺罪として起訴されたが、起訴状の公訴事実には「村長発行の転出証明書に変造を加え、役場係員に提出した」旨の記載があった。第一審は地方裁判所の単独制裁判官によって審理されたが、本来であれば公文書変造罪等の法定刑に鑑み合議体で審理すべき事件であった。控訴審は、第一審の手続違法を認めつつも、第一審に差し戻さず自ら判決を下したため、被告人側が上告した。
事件番号: 昭和27(あ)6316 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
控訴審が、第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り控訴審として改めて事実を認定するを要しない。
あてはめ
1. 本件起訴状には罪名として詐欺のみが記載されていたが、公訴事実には公文書変造及び行使に該当する具体的態様が明記されている。したがって、これらの罪についても有効に公訴が提起されており、不告不理の原則には反しない。2. 第一審が単独制で行われた点は手続的に違法である。しかし、控訴審は適法な管轄権を持つ高等裁判所であり、かつ本件は覆審として実質的な審理がなされている。このような状況下では、事物管轄の錯誤と同視して差し戻す必要はなく、控訴審による自判は正当化される。
結論
被告人らに対し公文書変造等の罪についても審判を維持した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、訴因の特定は「公訴事実」の記載を基準に判断されるべきであり、罪名の誤りや欠落は直ちに審判対象を限定しないことを示す。また、裁判所の構成の違法(単独制と合議制の誤り)についても、被告人の防御権や審級の利益が実質的に害されていない場合には、控訴審での治癒や自判が許容される余地を認めたものといえる。
事件番号: 昭和25(れ)1419 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告は第二審の判決に対してなされるべきものであり、第一審判決の違法のみを主張し第二審判決の違法を主張しない上告理由は不適法である。 第1 事案の概要:被告人側が、第二審(控訴審)の判決ではなく第一審の判決に違法がある旨のみを主張して上告を提起した事案。 第2 問題の所在(論点):第一審判決の違法の…
事件番号: 昭和23(れ)619 / 裁判年月日: 昭和23年10月16日 / 結論: 棄却
原判決の事實摘示と、これが採證の用に供した各始末書、申述書の記載との間に、被告人が僞造轉出證明書に使用した架空人物の氏名不一致の點がありとしても、作成名儀人その他本件僞造文書の重大な要素についての記載内容において、兩者が一致する以上、右判示を違法とすることはできない。