一 控訴審が控訴趣意として主張された量刑不当について判断せず、他の控訴趣意を理由あるものとして第一審判決を破棄自判して刑を言渡したからとて、審理不尽であるということはできない。 二 量刑不当の控訴趣意は、第一審判決を破棄すべき理由として主張されたのであるから、他の控訴趣意が理由あるものとして第一審判決が破棄される以上、なお量刑不当の主張の当否を判断する実益はないばかりでなく、控訴審は自判して刑を言渡すに当りおのずから第一審判決の量刑の当否を判断しているものと解し得られるので、所論の量刑に関する主張も斟酌されているものと認むべきである。
一 量刑不当の控訴趣意について判断せず、他の控訴趣意を理由ありとして破棄自判した場合、審理不尽といえるか 二 他の控訴趣意を理由ありとして破棄自判した場合、量刑不当の主張に対する判断の要否
刑訴法392条1項,刑訴法400条但書
判旨
控訴審が他の控訴趣意を理由に第一審判決を破棄自判する場合、量刑不当の控訴趣意について直接判断を示さなくても審理不尽とはいえない。
問題の所在(論点)
控訴審が他の理由で第一審判決を破棄自判する際、被告人が主張した量刑不当の控訴趣意について判断を示さないことが、審理不尽(刑事訴訟法上の違法)に該当するか。
規範
控訴審が他の控訴趣意に理由があると認めて第一審判決を破棄し、自ら判決(自判)を行う場合、破棄の理由として主張された量刑不当の主張について別途判断を示す実益はない。なぜなら、控訴審が自ら刑を言い渡す過程において、当然に第一審の量刑の当否を判断し、当該主張を斟酌しているものと解されるからである。
重要事実
被告人が第一審判決に対し、量刑不当を含む複数の控訴趣意を申し立てた事案。控訴審(原審)は、量刑以外の控訴趣意を理由として第一審判決を破棄し、自ら刑を言い渡した(自判)。この際、原審は量刑不当の主張について明示的な判断を示さなかったため、被告人側が審理不尽および不利益変更禁止規定の抵触等を理由に上告した。
事件番号: 昭和30(あ)1162 / 裁判年月日: 昭和30年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判示事項としての判旨は示されていないが、本件のような状況において有印私文書偽造罪(刑法159条1項)が成立することを肯定した。 第1 事案の概要:本件判決文からは具体的な事実関係は不明であるが、被告人が他人の名義を冒用して有印の私文書を作成した事案であると推認される。 第2 問題の所在(論点):被…
あてはめ
本件において、控訴審は他の控訴趣意を理由として第一審判決を破棄しており、破棄を求める目的でなされた量刑不当の主張を独立して判断する必要性は消滅している。また、控訴審は自判において刑を決定しており、そのプロセスにおいて第一審の量刑の当否は自ずと検討されているといえる。したがって、被告人の量刑に関する主張は、自判の刑の決定において実質的に斟酌されていると認められる。
結論
控訴審が量刑不当の主張に直接答えず自判したとしても、審理不尽の違法はない。また、執行猶予期間の起算点や訴訟費用の負担が第一審と同様であれば、不利益変更にも当たらない。
実務上の射程
控訴審の自判プロセスにおける判断の合理性を肯定する判例。答案上は、破棄自判時における控訴趣意への判断の要否(刑訴法392条、400条但書等)が問題となる場面で、実質的な審理が尽くされていることを説明するための根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4831 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一人に対する有罪判決が、証拠能力のない証拠を事実認定に用いた訴訟手続の法令違反により破棄された場合であっても、その違法が当然に他の共同被告人の事実認定に影響を及ぼし、上告理由となるものではない。 第1 事案の概要:本件において、被告人とともに審理を受けていた相被告人の有罪部分が、原審(控訴…
事件番号: 昭和27(あ)6316 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
控訴審が、第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り控訴審として改めて事実を認定するを要しない。
事件番号: 昭和28(あ)200 / 裁判年月日: 昭和28年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意において原判決が大審院の判例に違反すると主張する場合であっても、それが原審で主張・判断されず、かつ引用判例と事実関係を異にする場合には、適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が、原判決は大審院の判例に違反するとして上告を申し立てた事案。しかし、当該判例違反の主張は原…