判旨
被告人に対し刑の執行猶予を言い渡さないことが直ちに憲法36条(残虐な刑罰の禁止)に違反するものではない。また、証拠に基づき賍物知情の事実を認定することは憲法14条や37条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 被告人に対し執行猶予を付さないことが憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。2. 証言および供述調書に基づき犯罪事実(知情)を認定することが憲法14条・37条に違反するか。
規範
1. 刑の執行猶予の言渡しをしないことは、憲法36条にいう「残虐な刑罰」には当たらない。2. 証拠に基づき犯罪事実を認定することは、憲法14条(法の下の平等)および37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判等)に違反するものではない。
重要事実
被告人は、盗品等関与罪(旧賍物罪)の知情(盗品であることの認識)について、単なる推測によって認定されたものであり違憲であると主張した。また、被告人に対して執行猶予が付されなかったことが、憲法36条が禁じる残虐な刑罰に該当すると主張して上告した。
あてはめ
1. 執行猶予は裁判所の裁量に委ねられる制度であり、これを付さないこと自体が刑罰の内容を不当に過酷にするものではなく、残虐な刑罰には当たらない。2. 本件では、第一審証人の証言および被告人の検察官に対する供述調書などの証拠が存し、これらを総合して知情の事実を認定している。したがって、推測のみに基づく認定ではなく、適正な証拠調べに基づくものであるため、憲法14条・37条違反の前提を欠く。
結論
被告人に対し執行猶予を言い渡さないことは憲法36条に違反せず、証拠に基づく事実認定も憲法14条・37条に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の解釈において、刑の執行形態(執行猶予の有無)は対象とならないことを示す。また、証拠に基づく事実認定が適正であれば違憲の主張は成立しないという、事実認定と憲法違反の峻別を示す実務上の先例となる。
事件番号: 昭和29(あ)3981 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指し、被告人にとって過重な刑罰であることが直ちにこれに該当するわけではない。 第1 事案の概要:被告人に対し言い渡された刑罰が過重であり、憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当するのではない…