憲法に残虐な刑というのは刑罰そのものの種類又は處刑の方法を指すのであるから原判決が老齡の被告人を八月の懲役に處したことを以て所論のように憲法の右の規定に違反するものということはできない、老齡のために刑の執行が不當と認められる場合には刑事訴訟法(舊刑訴法第五四六條第二號新刑訴法第四八二條第二號)に救濟の途が開かれている。
老齡の被告人を懲役八月に處したことと憲法にいわゆる残虐な刑罰
憲法36條
判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、刑罰の種類や執行方法が人道上残酷と認められるものを指し、適法な範囲内での個別の量刑判断が被告人にとって過重であることはこれに含まれない。
問題の所在(論点)
法律の範囲内で行われた具体的な量刑の適否、特に老齢の者に対する懲役刑の宣告が、憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。これは刑罰の種類そのもの、または処刑の方法を対象とする概念であり、法律の許す範囲内で裁判官が量定した刑が、被告人の個別事情に照らして過重であっても直ちにこれには該当しない。
重要事実
被告人は高齢(70歳以上)であったが、裁判所は懲役8か月の刑を言い渡した。これに対し、被告人側は老齢であることを理由に、当該刑罰が憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
憲法36条は刑罰の内容や執行の態様そのものを規制する趣旨である。本件において、懲役刑という刑罰の種類自体は憲法上許容されており、懲役8か月という期間も法律の定める範囲内である。被告人が老齢であるという個別の属性は、刑事訴訟法482条2号(刑の執行停止)等の執行段階における救済の対象となり得る事由にすぎず、刑の宣告自体を人道上残酷なものとする理由にはならない。
結論
老齢の被告人に懲役8か月を処したことは、憲法36条に違反しない。量刑の不当は事実審の裁量に属する問題であり、憲法問題には当たらない。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の定義を示すリーディングケースである。答案上では、死刑制度の合憲性や、特別法による重罰化が争点となる場面で、規範の定型句(刑罰の種類・方法を指す点)として引用する。個別の量刑不当は憲法問題ではなく裁量権の問題として処理すべきことを峻別する際にも有用である。
事件番号: 昭和27(あ)4504 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指し、被告人にとって単に過重な刑罰であっても直ちにこれに該当するわけではない。 第1 事案の概要:被告人は刑事事件の判決を受けた後、原判決が憲法36条に違反する「残虐な刑罰」を科したものであると主張…
事件番号: 昭和24(れ)1172 / 裁判年月日: 昭和24年10月18日 / 結論: 棄却
憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上殘酷と認められる刑罰を意味するのであつて被告人の側からみて過重の刑必ずしも「殘虐な刑罰」ではなく、又實刑を科することが被告人の側からみて過重の刑であるとしても、右の法條に違反するものでないことは、既にしばしば當裁判所の判例(昭和二三年(…