判旨
公職選挙法に基づく選挙権及び被選挙権の停止は、刑法上の刑罰そのものではないが、刑事訴訟法381条にいう量刑の範囲に含まれる。したがって、裁判所が同法252条3項による不停止の宣言をしないことは憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法上の選挙権・被選挙権の停止が、刑事訴訟法381条の「量刑」の問題に含まれるか。 2. 裁判所が公職選挙法252条3項による不停止の宣言をしないことが、憲法15条(参政権)に違反するか。
規範
公職選挙法に基づく選挙権・被選挙権の停止は、刑法に定める刑罰そのものには該当しないものの、刑事訴訟上の「刑の量定」(刑訴法381条)の問題として取り扱われるべき範囲に含まれる。また、同法252条3項に基づく不停止の宣言を行うか否かは裁判所の合理的な裁量に委ねられている。
重要事実
被告人が公職選挙法違反の罪に問われた事案において、原審は被告人に対し選挙権・被選挙権の停止を免除する旨の宣言(公職選挙法252条3項)をしなかった。これに対し弁護人は、当該停止は刑罰ではないため量刑の問題として扱うのは判例違反であり、また不停止の宣言をしないことは憲法15条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
まず、選挙権等の停止は刑罰そのものではないとする先行判例があるが、これは量刑の問題に含まれないことを意味するものではない。むしろ、停止の有無や期間は実質的に被告人の不利益に関わる判断であり、刑の量定の一部として扱うのが相当である。次に、不停止の宣言は法が裁判所に認めた裁量的な職権であり、諸般の事情を考慮した結果、不停止の宣言をしなかったとしても、参政権を保障する憲法15条に直ちに違反するものではないといえる。
結論
選挙権・被選挙権の停止は刑訴法上の量刑に含まれる。また、不停止の宣言をしないことは憲法15条に違反せず、原判決の判断は正当である。
実務上の射程
刑事訴訟における控訴理由としての「量刑不当」の範囲を確定させる際に活用できる。刑罰そのものではない附随的な法的効力であっても、被告人の地位に重大な影響を及ぼす処分については、量刑判断の一部として裁判所の裁量権の対象となることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和29(あ)2281 / 裁判年月日: 昭和30年7月22日 / 結論: 棄却
公職選挙法の規定による選挙権被選挙権停止の効果は、全く裁判所の法定の手続によりなされる選挙犯罪に対する有罪判決にかかるものである(公職選挙法二五二条三項による選挙権被選挙権の不停止または停止期間の短縮については、右有罪判決においてその判断が明示されるから、右の関係はなおさら明らかである)から、所論のように選挙権被選挙権…