一 如何なる理由により憲法の如何なる条項に違反するか述べていない上告趣意は、違憲の語を用いていても刑訴第四〇五条第一号の主張といえない。 二 公職選挙法第二五二条にいう選挙権、被選挙権の停止、不停止は刑法第九条第一〇条にいわゆる刑ではないが刑訴法第三八一条の「刑訴法の量定」には含まれるものと解すべきである。
一 憲法違反の語を用いていても憲法違反の主張をするものと認められない一事例 二 選挙権、被選挙権の停止、不停止は刑訴第三八一条の「刑の量定」に含まれるか
公職選挙法252条,刑訴法381条,刑法9条,刑法10条
判旨
刑事訴訟法381条にいう「刑の量定」とは広義の概念であり、刑法上の刑に限らず、選挙権の停止・不停止に関する判断もこれに含まれる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法381条にいう「刑の量定」に、刑法上の刑には該当しない「選挙権の停止・不停止」に関する判断が含まれるか。
規範
刑事訴訟法381条(控訴理由としての刑の量定の不当)にいう「刑の量定」とは、刑法9条、10条に規定される刑そのものに限定されない広義の概念である。これには、罰金の換刑処分、未決勾留日数の算入、刑の執行猶予の成否だけでなく、附随的な不利益処分の判断も含まれると解すべきである。
重要事実
被告人が公職選挙法違反等の罪に問われた事案において、第一審判決または控訴審判決において選挙権の停止に関する判断がなされた。弁護人は、選挙権の停止・不停止は刑法上の「刑」ではないため、これが不当であることを理由に刑の量定の不当(刑訴法381条)を主張することはできない、あるいはその判断に法令違反があると主張して上告した。
あてはめ
刑訴法381条が定める「刑の量定」は、被告人に科される不利益の全体を考慮する広義の概念として運用されている。判例によれば、換刑処分や未決通算、執行猶予等と同様に、選挙権の停止・不停止も被告人の法的地位に直接影響を及ぼす処分である。したがって、これらに関する判断は実質的に刑の量定の一環をなすものといえる。本件においても、選挙権の停止に関する判断は同条の概念に包含されるため、これをもって法令違反とすることはできない。
結論
選挙権の停止・不停止は刑事訴訟法381条にいう「刑の量定」に含まれる。したがって、当該判断の不当を理由とする控訴・上告の適否において、これを選択の対象とすることは適法である。
実務上の射程
量定不当の主張において、主刑だけでなく附随的な処分(選挙権停止や没収・追徴など)についても「刑の量定」の問題として争いうることを示す射程を有する。答案上は、刑訴法381条の「刑の量定」を広義に解釈する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和37(あ)659 / 裁判年月日: 昭和37年8月23日 / 結論: 棄却
公職選挙法第二五二条にいう選挙権、被選挙権の停止は刑法にいわゆる刑ではないが、それに関する裁判所の裁量は刑訴第三八一条同第四一一条第二号にいわゆる「刑の量定」には含まれる。
事件番号: 昭和35(あ)2426 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
公職選挙法第二五二条にいう選挙権、被選挙権の停止、不停止は刑法第九条、第一〇条にいわゆる刑ではないが刑訴法第三八一条の「刑の量定」には含まれる。