判旨
公職選挙法252条に基づく選挙権・被選挙権の停止措置は、刑訴法381条の「刑の量定」に含まれ、量刑不当を理由とする控訴裁判所の破棄自判の対象となる。また、刑の量定に関する事項は記録上証拠があれば足り、判決書に証拠を掲げて説明する必要はない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法252条に基づく公民権停止の有無・期間が、刑事訴訟法381条の「刑の量定」に含まれ、量刑不当として控訴理由となり得るか。2. 量刑の基礎となる情状事実について、判決書に証拠を掲げて説明する必要があるか。
規範
1. 公職選挙法252条による公民権の停止・不停止は、刑法上の「刑」には当たらないが、刑事訴訟法381条にいう「刑の量定」に含まれる。2. 控訴裁判所が第一審判決を量刑不当として破棄自判する場合、記録上証拠があれば足り、刑の量定に関する事項について判決書に証拠を掲げて説明することを要しない。
重要事実
被告人が公職選挙法違反の罪に問われた事案。第一審は懲役刑の執行猶予を言い渡したが、公民権の停止は行わなかった。これに対し検察官が、同派の他の買収者らがいずれも罰金刑および公民権停止の略式命令を受けて確定していることと比較して、被告人の公民権不停止は著しく均衡を失していると主張して控訴した。控訴審(原審)は、検察官が請求した関係者の略式命令謄本や前科調書等の事実取調べを行った上で、第一審判決を破棄し、被告人に対し2年間の公民権停止を言い渡した。被告人側がこれを判例違反として上告した。
あてはめ
まず、公職選挙法252条の規定は実質的に刑の量定と同様の性質を有するため、刑訴法381条の「刑の量定」に含まれると解される。本件において、原審は検察官が提出した略式命令謄本や前科調書といった新証拠を取り調べており、これに基づき他の共犯者等との刑の均衡を検討している。このような手続を経た上で、第一審の量刑を不当として破棄し自ら判決を言い渡すことは、刑訴法400条但書に違反しない。また、刑の量定に関する事実については、訴訟記録上にそれを認めるに足りる証拠が存在すれば十分であり、判決文中に逐一証拠を摘示して説示する必要はない。
結論
公職選挙法上の公民権停止は「刑の量定」に含まれ、控訴審は記録上の証拠に基づき、第1審の判断を量刑不当として破棄自判することができる。本件の原審の手続に違法はない。
実務上の射程
量刑不当(刑訴法381条)の意義を広範に解釈する際の根拠となる。特に、主刑以外の付随的な不利益措置(公民権停止等)についても、量刑の一部として控訴審での是正対象となることを示した点に実務上の意義がある。また、判決書の記載事項として、量刑事情に関する証拠摘示が不要であることを確認した判例である。
事件番号: 昭和28(あ)5535 / 裁判年月日: 昭和29年6月24日 / 結論: 棄却
原判決が、公民権停止の裁判をしていないときには、選挙権及び被選挙権に対する制限は、公職選挙法二五二条第一項所定の裁判の確定という事実に伴い法律上当然に発生するものであり裁判により形成される効果ではないから、同条項の憲法違反の主張は、原判決の違法を主張するものでなく上告理由として不適法である。