刑訴三八一条、四一一条二号の規定にいわゆる「刑の量定」とは、広義であつて、刑法にいわゆる「刑」の量定のほか、罰金の換刑処分、未決勾留日数の算入、刑の執行猶予等の附随処分をも含む概念であるから、選挙権、被選挙権に関する公職選挙法二五二条三項所定の裁判所の裁量に関する上訴理由は、前記刑訴の規定にいわゆる「刑の量定」の非難に該当するものと解すべきことは、大審院及び当裁判所における従来の判例の示すところである。(大審院判例集七巻一四六頁以下、最高裁判所判例集八巻六号七九四頁以下第二小法廷決定参照)
刑訴法第三八一条第四一一条第二号にいう「刑の量定」の意義
刑訴法381条,刑訴法411条2号
判旨
公職選挙法252条3項による選挙権・被選挙権の停止に関する裁判所の裁量は、刑事訴訟法上の「刑の量定」に該当する。そのため、同条項の適用に関する不当を理由とする上告は、量刑不当を理由とする上訴として適法に成立し得る。
問題の所在(論点)
公職選挙法252条3項に規定される選挙権及び被選挙権の停止(またはその免除)に関する裁判所の裁量判断が、刑事訴訟法における「刑の量定」に含まれ、上訴理由となり得るか。
規範
刑事訴訟法381条及び411条2号にいう「刑の量定」とは、刑法上の刑のみならず、換刑処分、未決勾留日数の算入、刑の執行猶予等の付随処分を含む広義の概念である。公職選挙法252条3項に基づく選挙権・被選挙権の停止に関する裁判所の裁量判断も、これに含まれる。
重要事実
被告人が公職選挙法違反の罪に問われた事案において、第一審または控訴審が同法252条1項に基づき選挙権・被選挙権を停止した、あるいは3項に基づきその停止を免除しなかった等の処分に対し、被告人側がその裁量の不当を理由に上告を申し立て、あわせて当該停止が裁判によらず法律上当然に発生する点等を捉えて違憲を主張した。
あてはめ
選挙権等の停止は、裁判の確定に伴い法律上当然に発生する効果であり、純然たる刑罰そのものではない。しかし、裁判所にその停止の有無や期間を左右する裁量が与えられている以上、その運用は実質的に被告人の不利益の程度を決定する付随処分としての性質を有する。したがって、執行猶予等と同様に「刑の量定」という広義の概念に包含されると解するのが相当である。
結論
公職選挙法252条3項所定の裁量に関する上訴理由は、刑事訴訟法上の刑の量定に対する非難に該当する。本件違憲主張は前提を欠き、採用できない。
実務上の射程
公職選挙法違反事件において、選挙権停止の免除(252条3項)が認められなかったことを「量刑不当」の一内容として主張する際の法的根拠となる。刑事訴訟法上の「刑の量定」を広く解釈する判例として、他の付随処分(没収・追徴等)の量定を争う際にも援用が可能である。
事件番号: 昭和31(あ)1597 / 裁判年月日: 昭和31年8月30日 / 結論: 棄却
公職選挙法第二五二条第三項の規定は、処刑者の利益のために、同法条第一項所定の刑に処せられたという事実に伴い法律上当然発生する選挙権、被選挙権停止の効果を、発生せしめず若しくはその停止期間を短縮するか否かの量刑的裁量を刑の言渡裁判所に与えたに過ぎない。