原判決中に、公職選挙法第二二一条第一項第四号の罪に関し「被告人は、自己の自由裁量をもつて配下の各選挙運動者に対する報酬の供与、酒食の饗応等の費用にこれをあて、たとえ余剰金が生じても、これを甲者等に返還せず、自由にこれを処分すべき意思の下に、該金円の供与を受けたものである」と判示した部分があつても、他の部分において、「甲等は、該金円の処分方を全く被告人の自由意思に委ね、この点について何等具体的な指示を与えなかつたものであり、従つて、若し被告人に於て、自己の選挙運動に対する報酬として、その全部または一部を自ら取得しようと思えば、その通りにしても差支えないとの趣旨をもつて、判示金員を被告人に手交したものである」旨判示し被告人が供与を受けた金員全額について(被告人が一部を他に供与したに拘らず)没収および追徴(各一部づつ)をしたことは、負担附供与の場合には、現実に他に供与した金員部分は受供与者から没収または追徴できない旨の大審院判例に反する判断をした場合にあたらない。
判例と相反する判断をしたことにあたらない一事例
公職選挙法221条1項4号,公職選挙法224条,刑訴法405条3号
判旨
公職選挙法252条に基づく選挙権・被選挙権の停止は、選挙犯罪の有罪判決に伴う処遇として、刑事裁判の手続と表裏不可分の関係で行われるものであり、憲法31条の定める適正手続に反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法252条1項に基づく選挙権・被選挙権の停止という制裁が、憲法31条の保障する適正な手続(法律の定める手続)に反しないか。また、刑事訴訟法235条1項(罪となるべき事実の摘示)との関係が問題となる。
規範
選挙権・被選挙権の停止規定(公職選挙法252条1項)は、選挙犯罪の処刑と共に定められるものであり、その手続は裁判所の公判における証拠調べ、有罪認定、量刑判断という刑事裁判の過程と表裏不可分の関係にある。また、同条3項により情状に応じた裁判上の調整(適用除外や期間短縮)の途も開かれている。したがって、当該処遇が刑事裁判の手続とは別に独立して課されるものでない限り、憲法31条の定める「法律の定める手続」によらないものとはいえない。
重要事実
被告人は選挙犯罪により起訴され、原審において有罪判決を受けた。その際、公職選挙法252条1項の規定に基づき、選挙権および被選挙権が停止されることとなった。被告人側は、この権利停止の処遇が「法律の定める手続」によらずに科されたものであるとして、憲法31条違反を主張して上告した。また、没収・追徴の対象となる金員の性質(請負的供与か負担付供与か)についても争われた。
あてはめ
本件における権利停止の処遇は、選挙犯罪の審判過程において、証拠に基づき有罪と認められ、量刑が考慮されるプロセスと一体不可分に行われている。裁判所は具体的な事案の情状に基づき、同条3項を適用して処遇を軽減する裁量も有している。このように、権利停止は刑事裁判の手続内で実質的な審理を経て決定されるものであり、手続外で自動的に科される孤立した制裁ではない。また、停止規定の適用は有罪判決の法的効果であって「罪となるべき事実」そのものではないため、刑事訴訟法上の手続違反も認められない。
結論
公職選挙法252条に基づく選挙権・被選挙権の停止は、適正な刑事裁判の手続と一体として行われるため、憲法31条に違反しない。
実務上の射程
行政上の不利益処分や付随的制裁が、どの程度刑事手続等の適正手続保障を必要とするかの判断材料となる。本判決は、刑事罰と一体不可分な関係にある制裁については、刑事裁判そのものの手続を通じて憲法31条の要請が満たされるというロジックを示しており、資格制限等の不利益処分を論ずる際の参照点となる。
事件番号: 昭和30(あ)3316 / 裁判年月日: 昭和31年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法252条に基づく選挙権及び被選挙権の停止は、確定判決による有罪事実に対して重ねて刑罰を科すものではなく、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。また、当該停止措置は法律の定める手続によらない不利益の賦課とはいえず、憲法31条にも違反しない。 第1 事案の概要:上告人は公職選挙法違反の罪…