判旨
刑法56条及び57条の再犯加重規定は、再犯者であるという事由に基づき新罪の法定刑を加重するものであり、前犯の確定判決を変更したり重ねて刑を科すものではないため、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法56条及び57条が定める再犯加重の規定は、一度確定した前犯の事実を理由に新罪の刑を重くするものであるが、これが憲法39条の「既に無罪とされた行為」あるいは「同一の犯罪」について重ねて刑事上の責任を問われないとする一事不再理・二重処罰禁止の原則に抵触しないか。
規範
憲法39条が禁ずる二重処罰とは、同一の犯罪について重ねて刑罰を科すことを指す。再犯加重規定は、前犯に対する確定判決を動かすものではなく、また前犯に対して重ねて処罰する趣旨でもない。それは、過去の犯罪経歴という事由に基づき、新たに犯した罪(新罪)に対する責任の重さを評価して、その法定刑を加重し重い刑罰を科し得ることを是認するものにすぎない。
重要事実
上告人は、刑法56条所定の再犯にあたるとして、同法57条に基づき再犯加重を適用された。これに対し、弁護人は、一度処罰された前犯を理由に、再び犯した罪について刑を加重することは、同一の行為について重ねて刑事上の責任を問うものであり、憲法39条後段の二重処罰の禁止に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における再犯加重は、あくまで「新たに犯した罪」に対する刑罰の内容を定めるものである。加重の根拠は、前犯があるにもかかわらず更生せず、再び罪を犯したという「再犯者であるという事由」にある。これは、新罪の犯情や被告人の属性を考慮して刑の範囲を調整するものであって、前犯の判決内容を変更したり、前犯そのものを再び処罰したりするものではない。したがって、一事不再理の効力を侵害するものとはいえない。
結論
刑法56条、57条は憲法39条に違反しない。したがって、再犯加重を適用した原判決は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
憲法上の二重処罰禁止の意義を問う問題や、再犯規定・累犯加重の合憲性が問われる場面で活用できる。判例の論理は「加重の対象はあくまで新罪であり、前犯は加重の『事由』にすぎない」という点にあり、前科による不利益取扱い全般の合憲性判断(例えば執行猶予の取消し等)においても同様の論理構成が可能である。
事件番号: 昭和25(あ)2823 / 裁判年月日: 昭和27年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の累犯加重規定は、過去の犯罪に対する再度の処罰を意味するものではなく、憲法39条の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が新たな罪を犯した際、過去に確定判決を受けた前科があることを理由に、刑法56条以下の規定に基づき累犯加重が行われた。これに対し、弁護人は累犯加重が憲法に違…