判旨
刑法上の累犯加重の制度は、前科があることを理由に重ねて処罰するものではなく、再犯の反社会性や強い責任を考慮して現に行われた犯罪に対する刑を重くするものであり、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法の累犯加重規定(再犯加重)が、同一の犯罪について重ねて処罰することを禁じた憲法39条に違反するか。
規範
憲法39条は、既に確定した判決がある事件について重ねて刑事責任を問うことを禁じている(一事不再理)。しかし、後の犯罪の処罰にあたって前科を考慮し、刑を累犯加重することは、前罪を再び処罰するものではなく、後罪の量刑判断においてその犯情や責任の重さを評価するものにすぎないため、同条に違反しない。
重要事実
被告人が犯した罪に対し、第一審判決が刑法の規定に基づき累犯加重の刑を科した。これに対し弁護人は、一度確定した前科があることを理由に重ねて重い刑を科すことは、憲法39条が禁じる二重処罰の禁止に抵触するとして、憲法違反を主張して上告した。
あてはめ
判例(昭和24年12月21日大法廷判決)の趣旨によれば、累犯加重は前科それ自体を処罰するものではなく、前科があるにもかかわらず更生せず、再び犯罪に及んだという点に現れた強い反社会性や非難の程度を、今回の犯罪の量刑として評価するものである。したがって、第一審が累犯加重を適用し、原審がこれを維持した判断は、確定した前罪を二重に処罰するものではないといえる。
結論
累犯加重の制度は憲法39条に違反しない。したがって、累犯加重を適用した原判決に違憲の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事法における責任主義と憲法39条の関係を整理する際に引用される。累犯に限らず、常習犯規定や量刑上の前科の考慮が二重処罰にあたらないとする理論的根拠(今回の犯罪の責任を重く評価しているに過ぎないというロジック)として機能する。
事件番号: 昭和25(あ)3003 / 裁判年月日: 昭和26年3月16日 / 結論: 棄却
右二重刑の主張につき判断するに累犯加重の制度は累犯者であるという事由に基いて新たに犯した罪に対する法定刑を加重し重い刑罰を科し得べきことを是認したに過ぎないもので、前犯に対する確定判決を動かしたり或は前犯に対し重ねて刑罰を科する趣旨のものでないから憲法第三九条に違反するものでないことは当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第…
事件番号: 昭和29(あ)2096 / 裁判年月日: 昭和29年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法56条及び57条の再犯加重規定は、再犯者であるという事由に基づき新罪の法定刑を加重するものであり、前犯の確定判決を変更したり重ねて刑を科すものではないため、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、刑法56条所定の再犯にあたるとして、同法57条に基づき再犯加重を適…