刑法第五六條第五七條の再犯加重の規定は、第五六條所定の再犯者であるという事由に基いて新に犯した罪に對する決定刑を加重し、重い刑罰を科し得べきことを是認したに過ぎないもので、前犯に對する確定判決を動かしたり、或は前犯に對して重ねて刑罰を科する趣旨のものではないから、憲法第三九條の規定に反するものではない、ということは、當裁判所大法廷の判例とするところである(昭和二四年(れ)第一二六〇號、同年一二月二一日判決)
再犯加重の合憲性
刑法56條,刑法57條,憲法39條
判旨
刑法56条、57条の再犯加重規定は、新たに犯した罪に対して重い刑罰を科し得ることを定めたに過ぎず、前犯について重ねて処罰するものではないため、憲法39条の一事不再理の原則に反しない。
問題の所在(論点)
刑法56条および57条に定める再犯加重の規定が、憲法39条の後段(二重処罰の禁止)に抵触し、違憲となるか。
規範
憲法39条が禁ずる二重処罰とは、既に確定判決を経た同一の犯罪行為について、再び刑事上の責任を問うことを指す。一方、再犯加重規定は、特定の犯罪歴があるという犯人の属性(再犯者であるという事由)に基づき、新しく犯した罪に対する法定刑の幅を広げ、刑を重くすることを認める趣旨である。したがって、前犯の確定判決を変更し、または前犯に対して重ねて刑罰を科すものではない限り、憲法39条には違反しない。
重要事実
被告人は、刑法56条所定の再犯にあたる状況下で新たな罪を犯し、同法57条の規定に基づき再犯加重が適用された。これに対し弁護人は、再犯加重の規定は前犯と新犯の双方に対して二重に刑罰を科すものであり、憲法39条の「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」という一事不再理・二重処罰禁止の原則に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
本件における再犯加重は、被告人が再犯者であるという事由を、新犯に対する量刑上の評価対象としたものである。これは新犯に対する法定刑の枠組みを変更するにとどまり、既に判決が確定した前犯自体の刑責を再度問うたり、前犯の判決内容を覆したりするものではない。したがって、被告人が主張するような「同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問う」ことには該当しないといえる。
結論
刑法56条、57条の再犯加重の規定は、憲法39条に違反しない。
実務上の射程
再犯加重の合憲性を端的に認めた判例である。答案上は、憲法39条の「二重処罰」の意義(同一の行為に対して二度処罰されないこと)を明示した上で、再犯加重の本質が「新犯の責任に対する評価」にあることを指摘し、一事不再理の射程外であることを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和24(れ)1260 / 裁判年月日: 昭和24年12月21日 / 結論: 棄却
刑法第五六條第五七條の再犯加重の規定は第五六條の所定の再犯者であるという事に基いて、新に犯した罪に對する法定刑を加重し、重い刑罰を科し得べきことを是認したに過ぎないもので、前科に對する確定判決を動かしたり、或は前犯に對し、重ねて刑罰を科する趣旨のものではないから所論憲法第三九條の規定に反するものではない。従つて右刑法の…
事件番号: 昭和29(あ)2096 / 裁判年月日: 昭和29年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法56条及び57条の再犯加重規定は、再犯者であるという事由に基づき新罪の法定刑を加重するものであり、前犯の確定判決を変更したり重ねて刑を科すものではないため、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、刑法56条所定の再犯にあたるとして、同法57条に基づき再犯加重を適…