仮に解散が無効で、その後に施行された選挙も法律上効力がないとしたところで、その選挙において行われた選挙違反罪に刑事責任がないといえないことは、当裁判所の判例とするところであるから、所論は採用することができない(昭和二八年(あ)四四三〇号同二九年四月二二日第一小法廷判決、集八巻四号五二六頁以下参照)。
解散の無効と選挙法違反罪の成否
憲法7条,公職選挙法221条
判旨
衆議院の解散が法律上無効であり、その後に施行された選挙が効力を有しない場合であっても、当該選挙において行われた選挙犯罪の刑事責任が免除されることはない。
問題の所在(論点)
衆議院の解散が無効である場合、その解散に基づいて実施された選挙における選挙違反行為について刑事責任を問うことができるか。
規範
選挙の前提となる衆議院の解散が法律上無効であり、その結果として選挙自体の効力が否定される事態が生じたとしても、その選挙の過程でなされた公職選挙法違反等の選挙犯罪の成否には影響を及ぼさない。実質的に選挙が行われ、そこで禁止行為がなされた以上、刑事責任は免責されない。
重要事実
被告人は、衆議院解散後に行われた総選挙において選挙違反罪に問われた。弁護人は、当該衆議院の解散(いわゆるバカヤロー解散)が憲法違反であり無効であるから、その解散に基づいて施行された選挙も法律上の効力がなく、したがって当該選挙において行われた行為について刑事責任を問うことはできないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、仮に弁護人が主張するように衆議院の解散が法律上無効であり、その後の選挙が法律上の効力を有しないと仮定したとしても、現実に行われた選挙の公正を害する行為が犯罪としての性質を失うものではない。当裁判所の判例(昭和29年4月22日判決等)に照らせば、選挙の効力の有無は、その選挙に際して行われた選挙犯罪の刑事責任を否定する根拠にはならないと解される。したがって、解散の有効性にかかわらず被告人の刑事責任は肯定される。
結論
選挙の前提となる解散が無効であったとしても、当該選挙における選挙違反罪の刑事責任を免れることはできない。
実務上の射程
統治行為論等が問題となる憲法上の重要事案であるが、刑事手続においては「前提となる行政・政治行為の瑕疵は、その過程でなされた犯罪の成立を阻害しない」という理屈で処理される。選挙違反事件において、選挙自体の効力を争うことで刑事責任を免れようとする主張を排斥する際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5625 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】衆議院の解散がかりに無効であるとしても、その後に施行された選挙において犯された選挙違反罪の刑事責任は免れない。 第1 事案の概要:被告人が、衆議院解散後に行われた総選挙において選挙違反罪に問われた事案。弁護人は、当該解散が憲法上無効であるから、無効な解散に基づく選挙における行為について刑事責任を追…