判旨
衆議院の解散が無効である場合であっても、その後に施行された選挙において行われた選挙法違反罪の成立は妨げられない。
問題の所在(論点)
衆議院の解散が無効である場合、その後に施行された総選挙において行われた選挙法違反の罪が成立するか(解散の無効が選挙犯罪の成否に影響を及ぼすか)。
規範
衆議院の解散の有効性に疑義がある場合でも、その解散後に現に実施された選挙という事実を前提とする限り、当該選挙に関連して行われた公職選挙法違反行為の処罰は、解散の有効不有効に左右されない。
重要事実
被告人が公職選挙法違反罪(選挙法違反)に問われた事案において、被告人側は、前提となる衆議院の解散が憲法上無効であることを主張し、無効な解散に基づく選挙における違反行為は犯罪を構成しないと争って上告した。
あてはめ
仮に主張されるように衆議院の解散が憲法上無効であるとしても、現実に選挙が施行され、その過程で法が禁ずる選挙違反行為が行われた以上、その違法性は否定されない。したがって、解散の効力に関する憲法判断を経ずとも、当該選挙に関連する刑事責任を問うことは可能である。
結論
本件上告は棄却される。解散が無効であるとしても、その後に施行された選挙において行われた選挙法違反が成立しないとはいえない。
実務上の射程
統治行為論等が問題となる衆議院解散の有効性については判断を回避しつつ、刑事罰の適用という個別具体的な法的権利義務の存否については、選挙の実施という外形的実態を重視して結論を導く実務的態度を示したものといえる。
事件番号: 昭和29(あ)195 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
仮に解散が無効で、その後に施行された選挙も法律上効力がないとしたところで、その選挙において行われた選挙違反罪に刑事責任がないといえないことは、当裁判所の判例とするところであるから、所論は採用することができない(昭和二八年(あ)四四三〇号同二九年四月二二日第一小法廷判決、集八巻四号五二六頁以下参照)。