判旨
選挙の買収事件において、共謀関係が認められない金品の授受については、共謀者間での授受に関する判例の法理を直接適用することはできない。
問題の所在(論点)
被告人と授受の相手方との間に買収の共謀事実が認められない場合に、買収共謀者間での金品授受に関する判例の法理を適用して判例違反を主張することができるか。
規範
選挙買収罪における金品の授受について、特定の判例の法理を適用するためには、その前提として被告人間に買収の共謀事実が認められることを要する。共謀の事実が認められない場合には、共謀者間での金品授受を前提とした判断枠組みを適用することは適切ではない。
重要事実
被告人らは、Aとの間で選挙に関する金品の授受を行ったが、第一審判決では被告人らとAとの間に買収を共謀した事実は認定されなかった。弁護人は、買収の共謀者間で金品の授受があった場合に関する過去の判例を引用し、本件への適用を主張して判例違反を理由に上告した。
あてはめ
本件において、各被告人とAとの間に買収を共謀した事実は第一審判決で認定されておらず、記録を精査しても共謀の事実は認められない。弁護人が引用する判例はいずれも「共謀者間において金品の授受があった場合」を対象とするものであり、共謀の事実がない本件においては事案の前提を欠いている。したがって、前提事実が異なる判例の引用に基づく判例違反の主張は採用できない。
結論
被告人間に共謀の事実が認められない以上、共謀者間での金品授受を前提とする判例の法理を本件に適用することはできず、上告は棄却される。
実務上の射程
共謀が認定されない事案において、共謀を前提とする判例(例えば共犯者間の没収・追徴等に関する法理など)の射程を争う際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5251 / 裁判年月日: 昭和29年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張せず原判決が判断を示していない事項についての判例違反の主張は、適法な上告理由とはならず、また、事実誤認が明白であっても刑訴法411条を適用すべき特段の事情がない限り上告は棄却される。 第1 事案の概要:被告人Aは、昭和27年10月21日にBに対して金員を供与した罪に問われた。弁護人は上…