判旨
選挙違反(供与罪等)の共謀者間であっても、金銭供与の共謀が認定されていない場合には、共謀者間における資金の授受を処罰の対象外とする判例の法理は適用されない。また、共犯者の自白は、公判廷における供述やその他の補強証拠によって真実性が担保される限り、有罪認定の証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
1. 運動報酬等の供与について共謀関係がない者同士の間で、選挙運動資金の授受が行われた場合でも、共謀者間の行為として不可罰となるか。 2. 供与の趣旨等について直接の証拠が共犯者の自白である場合、いかなる条件があれば有罪認定の証拠とすることができるか。
規範
1. 供与罪(投票買収・運動報酬供与等)を共謀した者たちの間で、その供与資金を授受する行為は、原則として処罰の対象とならない。ただし、この法理が適用されるためには、被告人と相手方との間に、当該金銭供与そのものについての「共謀の事実」が認定されていることを要する。 2. 共犯者の自白に基づく事実認定は、当該自白に加え、公判廷における被告人・共犯者の各供述およびその他の補強証拠を総合し、自白の真実性が認められる限りにおいて許容される。
重要事実
被告人AおよびBは、公職選挙法違反(運動報酬の供与等)の罪に問われた。第一審判決は、AとBとの間で合計6万円の金銭授受があった事実を認定したが、両者の間に「金銭供与の共謀」があった事実は認定していなかった。弁護人は、共謀者間での資金授受は罪にならないとする判例に違反すると主張し、また、Bの自白を証拠として採用したことを違憲であると主張して上告した。
あてはめ
1. 本件では、第一審判決において被告人AとBとの間に「金銭供与の共謀の事実」が認定されていない。したがって、共謀者間の資金授受を不可罰とする判例の適用前提を欠いており、AによるBへの金銭授受は処罰の対象となる。 2. 証拠面については、被告人Bの検察官に対する自白が直接証拠となっているが、裁判所は当該自白のみならず、公判廷におけるA・B両名の供述およびその他の補強証拠を総合して検討している。これにより、Bの自白の真実性が裏付けられていると判断されるため、憲法違反や証拠法則違反の瑕疵はない。
結論
被告人らの間に共謀関係が認定されない以上、金銭の授受は供与罪を構成する。また、共犯者の自白に補強証拠が備わっている本件の認定に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
共犯者間での資金授受が不可罰とされるのは「当該供与についての共謀」が前提である。答案上、買収資金の提供が共犯者間で行われた場合、まず共謀の存否を確認し、共謀が認められない場合には直ちに供与罪の成否を検討すべきである。また、補強法則との関係では、共犯者の自白の真実性を担保する事情(他の供述との整合性等)を具体的に摘示する際の論拠となる。
事件番号: 昭和28(あ)5374 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀者間での金員授受であっても、それが単なる内部的な準備行動にとどまらない場合には、公職選挙法221条1項所定の買収罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは共謀関係にあったところ、両者の間で選挙に関連して金員の授受が行われた。弁護人は、この授受は共謀者内部の準備的行動にすぎないとして、…