判旨
投票買収を共謀した者の間における買収資金の授受は、他人に投票買収を行うための共謀が認められない限り、判例の射程外であり、公職選挙法違反罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
共同正犯関係にある者の間における買収資金の授受が、公職選挙法の買収罪を構成するか。特に、買収資金の授受が罪とならないとされる判例の射程が及ぶ前提条件(共謀の有無)が問題となる。
規範
投票買収を共謀した者の間における買収資金の授受は、原則として罪とならない。しかし、この法理が適用されるためには、被告人らが「他人に投票買収をすること」をあらかじめ共謀していたという事実関係が必要である。
重要事実
被告人AおよびCらは、公職選挙法違反(買収)の罪に問われた。弁護人は、AとCとの間で授受された金員は、投票買収を共謀した者の間における買収資金の授受であるから、判例に照らして罪にならないと主張した。しかし、原判決の認定によれば、被告人AとCが「他人に投票買収を行うために金員を供与すること」を共謀した事実は認められていなかった。
あてはめ
弁護人が引用した「共謀者間での資金授受は罪とならない」とする判例は、あくまで「他人に投票買収をすること」を共謀した者たちの内部的な資金移動を指すものである。本件においては、原審の認定によれば被告人AとCとの間にそのような具体的な共謀の事実は存在しない。したがって、当該判例の前提を欠いており、判例違反の主張は当たらない。
結論
被告人AおよびCらの行為は公職選挙法違反罪を構成し、上告は棄却される。
実務上の射程
共謀者間の資金授受が不可罰とされる判例(最大判昭25・12・13等)の限界を示している。答案上は、買収罪の成否を検討する際、単なる資金の受け渡しだけでなく、その前提となる「誰に対して買収を行うか」という具体的共謀の有無によって、判例の射程を区別する必要がある。
事件番号: 昭和30(あ)3449 / 裁判年月日: 昭和31年2月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙違反(供与罪等)の共謀者間であっても、金銭供与の共謀が認定されていない場合には、共謀者間における資金の授受を処罰の対象外とする判例の法理は適用されない。また、共犯者の自白は、公判廷における供述やその他の補強証拠によって真実性が担保される限り、有罪認定の証拠とすることができる。 第1 事案の概要…