判旨
共謀者間における選挙運動資金等の金員授受について、それが単なる準備行為にとどまるか、あるいは公職選挙法違反の供与罪等に該当するかが争われた事案において、第一審が認定した事実関係に基づき、当該金員授受は犯罪の構成要件に該当する実行行為であると判断した。
問題の所在(論点)
共謀者間における選挙運動資金等の授受が、単なる「共謀者間の準備行為」にとどまるのか、それとも公職選挙法における「供与」等の実行行為に該当するのか。
規範
共謀関係にある者の間で行われた金員の授受であっても、それが単なる共謀の実行に向けた準備行為にとどまるのではなく、選挙運動資金や報酬としての実態を有する場合には、公職選挙法上の金員供与等の罪の実行行為(既遂)として成立する。
重要事実
被告人Aが、被告人Bに対し、選挙運動資金および報酬として金員を供与した。弁護人は、この金員の授受は金員供与を実行するための共謀者間の準備行為にすぎないと主張して、公職選挙法違反の成立を否定しようとした。
あてはめ
第一審判決は、被告人Aから被告人Bへの金員授受について、単なる準備段階の動作ではなく「選挙運動資金並びに報酬として金員を供与した」事実を認定している。したがって、当該授受自体が法が禁ずる供与の実行行為そのものであり、共謀者間であることを理由に準備行為と評価することはできないと解される。
結論
本件金員の授受は単なる準備行為ではなく公職選挙法上の実行行為に該当し、同法違反の罪が成立する。
実務上の射程
共謀共同正犯が成立する場合であっても、共謀者間での金銭等の授受が直ちに内部的な準備行為として不可罰(あるいは構成要件非該当)となるわけではない。授受の目的が選挙運動資金や報酬としての性質を具備していると認定される限り、独立した実行行為として評価される。司法試験の刑事法においては、共謀関係と実行行為の区別に留意する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5126 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動に対する報酬や投票取りまとめの報酬・費用として金員を供与する行為は、公職選挙法上の買収罪等に該当する。本件では、金員の供与が正当な趣旨で行われたとの弁護人の主張に対し、裁判所は確定事実に基づきこれを否定した。 第1 事案の概要:被告人は、選挙に際して他者に対し、1,000円および10,00…