判旨
買収共謀者間での金員授受にとどまらず、外部の者に供与される段階に至った場合は、公職選挙法の買収罪が成立し、同法252条1項の規定が正当に適用される。
問題の所在(論点)
買収共謀者間での金員授受にとどまる場合と、それを超えて買収行為がなされた場合で、公職選挙法252条の適用関係がどのように区別されるか。また、本件において同条1項の適用が正当か否か。
規範
買収罪の成立において、単なる共謀者間での資金移動(予備的段階)にとどまる場合と、実際に買収の目的をもって外部へ金員が流出・供与される段階に至った場合とを区別し、後者の場合には実刑または執行猶予の停止を含む公職選挙法252条1項の制裁が適用される。
重要事実
被告人らは公職選挙法違反(買収)の罪に問われた。弁護人は、本件が買収共謀者間での金員授受にすぎない旨を主張し、刑罰の適用根拠となる条文(252条2項であるべきとの主張)や事実誤認について争い、上告した。しかし、原審は被告人らの行為を同法252条1項所定の期間制限等が適用される事案として維持していた。
あてはめ
最高裁は、被告人が援用した「買収共謀者間の金員授受にとどまる」事案の判例は、本件の実態とは異なると判断した。本件では単なる共謀者間の移動を超えた買収実態があることが前提とされており、第一審が「公職選挙法252条1項」を適用し、原判決がこれを維持した判断に誤りはないと解される。被告人が主張する同条2項適用の余地はない。
結論
本件に公職選挙法252条1項を適用した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙犯罪における処罰規定(252条)の適用区分において、内部的な共謀段階か、外部的な買収段階かを区別する視点を示す。実務上は、共犯者間の資金授受が「買収の実行」の一部と評価されるかどうかが1項適用の分水嶺となる。
事件番号: 昭和28(あ)5374 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀者間での金員授受であっても、それが単なる内部的な準備行動にとどまらない場合には、公職選挙法221条1項所定の買収罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは共謀関係にあったところ、両者の間で選挙に関連して金員の授受が行われた。弁護人は、この授受は共謀者内部の準備的行動にすぎないとして、…