判旨
強姦罪(現行法の強制性交等罪)の成立には、被害者の抗拒を著しく困難ならしめる程度の暴行または脅迫が必要であり、脅迫によって畏怖させた上で姦淫する行為は同罪を構成する。また、証人尋問の必要性は裁判所が判断すべきものであり、不必要な証人の申請を却下することは憲法37条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
1.被害者の承諾があったと主張される状況において、どの程度の脅迫があれば強姦罪が成立するか。2.裁判所が被告人側の証人尋問申請を却下することは、憲法37条2項が保障する証人尋問権を侵害するか。
規範
1.強姦罪(刑法177条・当時)の実行行為としての脅迫は、被害者の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを要する。2.憲法37条2項の証人喚問権は、裁判所に対し、被告人が申請した全ての証人を尋問することまでを義務付けるものではなく、不必要と思われる証人の尋問を却下することは同条に違反しない。
重要事実
被告人A、Bらは、被害者Cに対し、媒介者Dを通じて承諾を得たと主張して姦淫に及んだが、実際にはCに対し脅迫を加えて畏怖させ、順次強姦したとして起訴された。また、被告人Eの弁護人が被害者Cの再尋問を申請したが、原審はこれを不必要として却下した。被告人らは、暴行を用いておらず抗拒不能な状態にもなかったとして強姦罪の成否を争い、また証人申請の却下は憲法違反であるとして上告した。
あてはめ
1.実体法上の判断について、原判決が認定した事実によれば、被告人らは被害者Cに対し「抗拒を著しく困難ならしめる程度の脅迫」を加え、Cを畏怖させた上で順次姦淫している。これは強姦罪の構成要件に該当する。2.手続法上の判断について、憲法37条2項は無制限に証人の喚問を認める趣旨ではない。原審が記録に基づき、被害者Cの再尋問を不必要と判断して却下したことは、裁判所の裁量の範囲内であり適法である。
結論
1.被告人らの行為は強姦罪を構成し、原判決の判断は正当である。2.裁判所による証人尋問申請の却下は憲法37条2項に違反しない。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
強姦罪(現行法上の強制性交等罪・不同意性交等罪)の伝統的な判断枠組みである「著しい抗拒困難」の基準を確認する際に用いる。また、刑事訴訟法上の証拠調べの必要性に関する裁判所の裁量権と、憲法37条2項の限界を示す判例として重要である。
事件番号: 昭和26(あ)4481 / 裁判年月日: 昭和27年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人が申請した証人を裁判所が不必要と認める場合であってもすべて尋問しなければならないとする趣旨ではなく、証人採用の要否に関する裁判所の裁量を認めている。 第1 事案の概要:被告人は、公判過程において特定の人物(CことD)を証人として申請した。しかし、原審(裁判所)はこの証人申請…