刑訴第三二一条第一項第二号後段の規定は、憲法三七条第二項に違反しない。
刑訴第三二一条第一項第二号後段の規定と憲法第三七条第二項
憲法37条2項,刑訴法321条1号2号
判旨
刑事訴訟法326条に基づき被告人が証拠とすることに同意した書面については、同法325条による供述の任意性の調査を必要とせず、裁判所の裁量により相当と認めれば証拠として採用できる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法326条の同意がある書面について、同法325条に基づく任意性の調査を要するか。また、伝聞証拠の証拠採用を認める規定は、憲法37条2項の証人審問権に反しないか。
規範
被告人が書面を証拠とすることに同意(刑訴法326条)した場合には、裁判所は、同法325条が規定する供述の任意性の調査を個別に行う必要はない。同意がある以上、裁判所はその裁量により、当該書面の内容や作成の状況等に照らして相当と認めるときは、これを証拠として採用することができる。
重要事実
被告人は、検察官が作成した証人A及びBの各供述調書について、第一審公判において証拠とすることに同意した。第一審裁判所は、A及びBを公判廷に召喚して証人尋問を行い、被告人側に反対尋問の機会を与えた上で、上記同意に基づき各供述調書を証拠として採用した。これに対し弁護人は、任意性の調査を欠くことや、伝聞証拠の採用が憲法37条2項の証人審問権に違反すると主張して上告した。
あてはめ
憲法37条2項は、召喚された証人に対して反対尋問の機会を与えることを保障する趣旨であり、反対尋問を経ない書面の証拠採用を絶対的に禁じるものではない。本件では、被告人らが各供述調書の証拠採用に同意しており、かつ公判廷において供述者本人の証人尋問も行われ、反対尋問の機会が実際に保障されている。このような状況下で、第一審裁判所が裁量により当該調書に相当性があると認めて採用した判断は正当であり、改めて任意性の調査を行う必要はないといえる。
結論
刑訴法326条の同意がある場合、325条の任意性調査は不要であり、裁判所の裁量による証拠採用は適法である。また、伝聞例外規定は憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
同意証拠(326条)の成立後に「任意性」や「特信状況」の欠如を理由として証拠能力を争うことはできないという実務上の原則を示す。反対尋問権の放棄としての同意の法的性質を裏付ける判決として活用される。
事件番号: 昭和26(あ)2367 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判期日において証拠とすることに同意した証人尋問調書については、被告人が反対尋問権を放棄したものと解される。したがって、当該調書を証拠として採用することは憲法37条2項に違反せず、適法である。 第1 事案の概要:恐喝罪等で起訴された被告人の公判において、検察官が各証人の尋問調書を証拠として…
事件番号: 昭和25(あ)3344 / 裁判年月日: 昭和26年12月6日 / 結論: 棄却
論旨に摘示する第一審判決の冒頭判示は被告人の経歴としての説示にとどまつて、同判決がこれを事由として累犯加重をしていないことは判文上明らかなところであり、仮りに第一審がこれを情状として量刑の判断資料に供したとしても、かかる事実を量刑の資料に供しても所論憲法の規定に違反するものでないと解すべきことは昭和二四年(れ)一二六〇…