公判調書に刑訴三二八条の証拠とすることに同意した趣旨の記載がなく、単に同意すると記載してある以上、前記「同意」が刑訴三二六条という全面的な同意を意味するものであることは、公判調書上明白というべきである。
公判調書に単に「同意する」とのみ記載されてある場合の同意は刑訴第三二六条の同意と解すべきか
刑訴法326条,刑訴規則44条1項22号
判旨
公判調書に証拠使用の目的が限定されず単に「同意」と記載されている場合、その同意は原則として刑訴法326条に基づく証拠同意を意味する。証人尋問終了後に検察官が供述調書の取調請求を行い、弁護人が同意した事実は、事実認定の証拠としての同意(326条)と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
公判調書上に「同意」とだけ記載されている場合、その同意は刑訴法326条の証拠同意を指すのか、それとも328条の弾劾証拠としての使用を承諾したものに過ぎないのか。同意の趣旨の解釈が問題となる。
規範
公判調書において、検察官の取調請求に対して弁護人が「同意」した旨が記載されている場合、特段の事情がない限り、それは刑事訴訟法326条所定の同意を意味する。取調請求の経緯や時期に照らし、証明力を争うための証拠(328条)として限定的に提出されたと解すべき事情が認められない限り、伝聞例外を認める同意として扱うべきである。
重要事実
検察官が証人Aの供述調書の取調を請求した際、第2回公判期日では被告人側の異議により撤回された。しかし、その後にAが証人として公判期日外および第5回公判期日で証言を行い、供述調書と概ね同趣旨の検察官に有利な証言をした。その尋問終了直後、検察官が他の証拠と共に当該供述調書の取調請求を行ったところ、弁護人は「同意」すると述べ、公判調書にもその旨が記載された。弁護側は、この同意は刑訴法328条による証拠とすることへの同意に過ぎないと主張した。
あてはめ
まず、公判調書上、検察官の取調請求が328条に基づくものであることや、弁護人の同意が328条の趣旨に限定されることを示唆する記載は一切ない。次に、請求のタイミングに注目すると、証人Aが公判廷で既に検察側に有利な証言を終えた直後になされている。この状況下で検察官が自ら「証言の証明力を争うため」に調書の取調を請求することは論理的に想定しがたい。他方、証言内容が固まった段階で、被告人側が敢えて事実認定の証拠とすることに同意(326条)する可能性も十分に否定できない。したがって、単なる「同意」との記載は326条の同意を意味すると解するのが明白である。
結論
本件同意は刑訴法326条に基づく同意と認められる。したがって、当該供述調書を証拠としたことは適法であり、憲法37条違反等の主張は理由がない。
実務上の射程
公判調書の記載(同意)がどの条文の同意を指すのかについて、請求の時期や証人尋問の経過といった客観的状況から判断する手法を示した。実務上、不同意の意思がある場合にはその趣旨を明確に述べるべきであり、漫然とした「同意」は326条の同意と擬制されるリスクがあることを示唆している。
事件番号: 昭和29(あ)154 / 裁判年月日: 昭和30年11月29日 / 結論: 棄却
刑訴第三二一条第一項第二号後段の規定は、憲法三七条第二項に違反しない。