所論司法警察員に対する供述調書はいずれも被告人が第一審公判で証拠とすることに同意したものであるから、その後弁護人の申請により右供述者等を公判において証人として取り調べたとしても、このために右供述調書が所論のように当然証拠能力を失つたということはできない。
被告人以外の者の司法警察員に対する供述調書の証拠能力 ―公判廷で証拠とすることの同意のあつた書面の作成者を証人として取り調べた場合と同意の効力―
刑訴法321条1項3号,刑訴法326条,刑訴法318条
判旨
被告人が第一審公判で証拠とすることに同意した供述調書は、その後に供述者を公判において証人として取り調べたとしても、当然に証拠能力を失うものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法326条1項に基づき証拠同意がなされた供述調書について、その後に供述者本人が公判廷で証人として尋問された場合、当該調書の証拠能力は失われるか。
規範
刑事訴訟法326条1項に基づく証拠同意がなされた場合、当該書面は伝聞例外として証拠能力を取得する。この証拠能力は、後の公判期日において供述者本人が証人として尋問を受け、反対尋問の機会が与えられたとしても、当然に消滅したり失効したりする性質のものではない。
重要事実
被告人は、第一審公判において、司法警察員が作成した供述調書を証拠とすることに同意した。その後、弁護人の申請により、当該供述調書の作成にかかる供述者等が公判において証人として取り調べられた。弁護側は、証人尋問が行われた以上、先の供述調書はその証拠能力を失うべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、問題となっている司法警察員に対する各供述調書は、記録によれば被告人が第一審公判で証拠とすることに同意したものである。この同意により、刑事訴訟法上の証拠能力が確定的に付与されている。その後の公判過程で、弁護人の申請に基づき当該供述者が証人として取り調べられた事実は認められるが、この証人尋問の実施という事後的な事情は、既に同意によって認められた書面の証拠能力を遡及的に否定する法的根拠にはなり得ない。したがって、証人尋問を経た後であっても、当該調書を証拠として採用し、事実認定の資料とすることは適法である。
結論
証拠同意をした供述調書について、その後に供述者の証人尋問が行われたとしても、当該調書の証拠能力は失われない。
実務上の射程
同意証拠の撤回の可否や限界に関する議論とは別に、一度同意がなされた証拠の効力継続性を認めたものである。実務上、不同意にして証人尋問を求めるべきか、同意した上で弾劾証拠等で争うべきかの戦略的判断の重要性を示唆する。答案上は、伝聞例外の同意の効果が後続の手続によって当然には左右されないことを論述する際に用いる。
事件番号: 昭和29(あ)2685 / 裁判年月日: 昭和31年9月25日 / 結論: 棄却
第一審において証拠とすることに同意した証拠尋問調書の証拠能力を、上告審に至つて争うことは許されない。